第2章 superfluous power
ミランダの後に続いて人混みを掻き分け進む。大人達の中でおいて行かれないように必死で走っていると、程なくしてミランダが立ち止まった。
「さっきの様子からして、この辺に居るはずだよ」
「ありがとう!」
「あの子はあの船みんなの娘みたいなもんだからね。アンタ一人が妙に気負うんじゃないよ、ひよっこ」
「す、すみません」
ミランダは港の方へ戻るといい、再び走って行った。残されたシャンクスは相変わらず大きな周囲に負けないように、目一杯背伸びをして視界を確保する。子供子供子供……と呟きながら歩きまわっていると様々な会話が飛び交っている中で、ふと甲高い声を拾った。反射的に声の方へ駆け出すと、前方から走ってきた人物と正面からぶつかる。
「きゃ」
「うわ、すみませ……ああ!! 泣いてる女の子!!」
「え? ごめんなさい急いでて…」
「おい、フレイアはどこだ!?」
「え、え」
「えーと、ほら、お前を助けた、フード被った海みたいな色の髪の」
「ひ、人違いです!!」
「え?」
「弟を探してるんです! ごめんなさい!」
必死に迫るシャンクスが怖かったのか、慌てた様子で走り去っていく少女を呆然と見送る。
(くそ、振り出しか。ミランダさんのところに行ってないか!? やっぱり戻って……)
「待って!!!」
「え? うっわ!」
突然背後から飛びつかれて、シャンクスが耐える間も無く押し倒された。なんとか顔面と地面の接触を免れると、自らに突進してきた存在を見る。
「助けて!! お姉ちゃんが、私のせいで」
「お前……」
泣き腫らした目で見上げる少女を見て確信すると、力強く頷いて少女を担ぐ。
「話は走りながら聞く! とりあえずおれ達の船に行くぞ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「……」
腕の中でひたすら謝り続ける少女に何も言えないまま、ただ前だけを見て走り出した。少女を責めるのは簡単だ。しかし、彼女だけを逃すという選択をしたのはフレイア自身であり、それは彼女自身の責任。
「お前が捕まらなくてよかった」
人の往来は多く、経済も発展しているが大きい島では無い。手掛かりがあれば見つけられる可能性は高まる。決意を新たにして、シャンクスが少女を抱えてる手に力を込めた。