第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
「……顔上げろ」
白ひげの重々しい言葉にレオーラはゆっくりと頭を上げた。オッドアイの両目を開き唇を引き結んでいる男を正面から見据え、白ひげは片手を伸ばす。大きな指先でレオーラの頭を突いた白ひげは優しく目を細めた。
「頭なんか下げる必要ねェよ。お前は今でもおれの……おれ達の家族だ」
「……はい……はい!」
「まったくお前は……何年経っても気負いな性格が治らねェな」
白ひげはポンポンと優しくレオーラの頭を叩く。それに今にも泣きそうになっているのを見て「なに泣いてんだよい」とマルコが軽く野次を飛ばした。
「泣いてないよ。目にゴミ入っただけ」
「そうかよ」
「ところでレオーラ、お前一人で来たのか?」
白ひげの訝しげな表情を見て、レオーラは立ち上がって首を縦に振る。
「フレイアから伝言。必ず行く。弟を助けるのに理由はいらない……だって」
「ふん、揃いも揃ってバカ共が」
言葉とは裏腹に嬉しそうな白ひげの様子に一同の気配が緩む。しかし、その雰囲気はコーティング職人による準備完了の声かけにより身を潜めた。今の状況を思い出し、全員の顔が引き締まる。白ひげは固い声でレオーラの通り名を呼んだ。
「頼んだぞ【千里眼】。皆の背中を守ってくれ」
「……任せてよ」