第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
レオーラのよく通る声が周囲に響く。
「都合のいいことを言ってるのは分かってます……僕は仲間の死に向き合いきれず、一度は船を降りた男です。そのくせ海で生きることも捨てられず、オヤジのマークを背負う覚悟も持てず、妹の船に乗って航海をしてる半端者だ」
「……」
「それでも!」
レオーラはそっと地面につけた手を握りしめた。激情を抑えた声が周囲の人々の耳に刺さる。
「オヤジや白ひげ海賊団の皆んなを今でも家族だと思ってる。エースを……弟を助けにいくのに力になりたい! お願いします……相棒一人守れなかった僕だけど、もう一度、皆んなの背中を守らせてください!」
レオーラの言葉を聞いて、マルコ達古参の幹部達は皆エルトンの顔を思い浮かべていた。エルトンが死んだ戦いの時――それは嵐の次の日だった。数日雨に打たれながら船の進路を必死に守り、嵐を抜けたところを襲われた。レオーラは嵐の中で滅多にひかない風邪を拗らせながらも、疲弊している若いクルー達に代わって戦場に出た。しかし、普段通りの働きを出来るわけもなく、かつ彼の身を案じ普段以上に前のめりになったエルトンという不幸が重なった結果、エルトンは敵の手にかかって致命傷を負った。
誰のせいでもなかった。偶然の不幸が重なった結果……しかし、レオーラは幼馴染が死んだ悲しみと自己嫌悪に潰され、船を降りるに至った。それを責めた人間はいないし、いつでも戻ってきていいと言って送り出したことも、当時いた幹部達には昨日のことのように思い出せる。