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鏡面【ONE PIECE】

第15章 背中を追うこと、隣に立つこと


「白ひげほどの男が、新世界の入り口近くにいたのは気になってたけど……まさかこれを読んでたのか?」
「可能性の一つ、くらいには思ってたと思うわ。オヤジさんだもの」
「フレイア……僕は先に行く。船を貸して」
「それは……」
 レオーラの必死の形相にフレイアは言葉を詰まらせる。
(エル・ミラージュは大型船でもないし、風を捕まえれば間に合う可能性は高い。それでも確かじゃない……)
「頼む」
 勢いよく頭を下げたレオーラにフレイアは眉間に皺を寄せながらも、小さく頷いた。
「その方が確実ね。リオン、船の準備をしてあげて」
「話は聞いたわ。マリンフォードでしょ」
 船内から出てきたマリンに向かってフレイアはマリンフォードまでの航路を取ることと、日数の確認を命じると、レオーラに向き直った。その真剣な眼差しにレオーラは背筋をまっすぐ伸ばして応える。
「オヤジさんに伝えて。必ず行く。弟を助けるのに理由はいらないって」
「……分かった」
「オヤジさんのビブルカードは」
「持ってるよ。当たり前だろう」
(本当は……いつか気が変わったら船に戻ってこいって言われて渡されたんだけどね)
 エルトンが死に、船を降りた時のことを思い出してレオーラは目を伏せる。しかし、すぐに心に喝を入れて船の中に戻った。彼とて準備がある。その背中をしばらく見つめていたフレイアは、肩を叩かれて振り返った。
「フレイア、間に合うわ。飛ばすから途中の補給もできないけど、大丈夫?」
「蓄えはある。それでお願い」
「分かったわ」
 舵の方に走っていくマリンの後ろについて、フレイアも2階甲板に向かう。船に格納していた小型のボートが海に落とされたのを確認し、そこに乗り込む大きな背中に声をかけた。
「一人で突っ走るんじゃないわよ!」
「……分かってる!」
 フレイアの激励に背中で応えつつ、レオーラは船のエンジンに点火する。僅かに振り返って笑ってみせたレオーラはそれきり船を走らせて去っていった。船が豆粒になるまで海を見つめていたフレイアは、黙って首元のペンダントを握りしめる。
「……私に海流を起こせるほどの力があれば……」

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