第14章 嵐の前の帰省
押し黙るフレイアとレオーラを見て、鏡面海賊団の他のクルー達は口を挟めることではないと悟ったのか、そっと静かに二人を見守った。
「エースはティーチを追ってる」
「ひとりで? エースの実力を疑うわけじゃないけど、それはちょっと……」
「おれ達も止めたんだが、飛び出して行ってな……」
「ビスタ」
「すまん」
言い過ぎだ、と白ひげに咎められたビスタは口を閉じた。フレイアは心配そうに表情を歪めて白ひげを見つめる。それを感じた白ひげは、そっと大きな手でフレイアの頭を覆った。
「この船のクルーじゃねェお前が気にするな」
「でも……それでも、エースは弟だよ」
「そうだな……だが、お前は【鏡面】だ」
白ひげの突き放すような言葉にフレイアは唇を引き結ぶ。
「お前はあくまで敵船の船長……あまりこっちの事情に首を突っ込むもんじゃねェ……まったく、赤髪といい世話焼きなガキ共だ」
「なんでそこでシャンが出てくるのよ」
不服そうに目を細めるフレイアに、白ひげは数日前にシャンクスの方から使者が来たことを話した。使者の手紙を破り捨てたと聞いてフレイアは呆れた顔で「まぁ、やるだろうとは思うけど……」と呟く。
「大方、エースのことだろうとは思うがな」
「シャン、来ると思うよ」
「だろうな」
不敵に笑う白ひげを見て、フレイアは確信した。シャンクスが何を言おうと、白ひげはエースを止めることはしないだろうと。それが……どのような道に続こうと、その尻拭いをする覚悟を決めていると。
それを悟ったフレイアは真っ直ぐに白ひげを見つめた。
「オヤジさん、私は……確かに白ひげ海賊団の一員でも傘下の海賊団でもない。でも、今でもオヤジさんの娘だと思ってる。それは……レオーラと同じ。それだけは忘れないで」
「……ああ」
白ひげはフレイアの言葉の裏に隠された決意を感じて、静かに頷いた。
嵐はすぐそばまで迫っている。