第14章 嵐の前の帰省
魚人島を経由し、新世界に戻ってきた鏡面海賊団を迎えたのは雨降り頻る嵐だった。少人数でも航海ができるよう、最新の技術を常に取り入れている船といえどもグランドラインの天候相手ではあくまで乗り切るための手段にしかならない。航海士であるマリンの指揮のもと、全員がフル稼働で嵐を乗り切るまで甲板を走り回ることとなった。
ようやく嵐を抜け、クルー達が代わる代わるに休憩をとる中、見張り台にいたリオンが遠くに船影を発見した。報告を受けて甲板にいたレオーラが船影の方に視線を向けると、そこに映った船と海賊旗を確認しフレイアに声をかける。
「フレイア、オヤジの船だけど、どうする?」
「え、白ひげのオヤジさん?」
パッと顔を明るくしたフレイアにレオーラは大きく頷く。
「モビー・ディックだ」
その言葉に「よし、会いに行こう」と叫んだフレイアは、休憩中のミレイに変わって舵を握る。レオーラの指示を受けて大きく取り舵をきった。
少しずつフレイアでも視認できる距離にモビー・ディックが迫ると、その大きな船から青い光がエル・ミラージュ目掛けて猛スピードで飛んできた。それを見たフレイアは光に向かって大きく手を振る。
「マルコー! 久しぶり!」
「久しぶり、じゃねェよい」
舵を取るフレイアの前に着地したマルコは、やれやれと言いたげな顔でフレイアを見る。しかし、全身から会えて嬉しいというオーラを発する妹に兄が言える小言はそう多くない。
「お前さんも一端の海賊になってんだ。敵戦に笑顔で近づいてどうすんだ」
「だってオヤジさんの船だもん。カイドウやビッグ・マムの船になんか近づかないわよ」
「そういう問題じゃねェ……」
コツンとフレイアの頭を小突くと、マルコは子供に言い聞かせるように話し始める。
「フレイアも海軍にとっちゃ20億超えの首なんだ。それがオヤジに接触したとなれば、ピリピリするし、何事かと騒ぎになるだろい。そこらへんの影響も考えて行動しろって言ってんだよ」
マルコの言葉を理解しながらも納得できないフレイアはムッとした顔で口を開いた。
「じゃあマルコは私と会えて嬉しくないわけ?」
「そうは言ってないよい」
「じゃあ、いいじゃない。私もマルコと会えて嬉しい」
「……ったく」