第14章 嵐の前の帰省
「……別におれだけが特別になれるなんて思ってない」
ボソリとそう呟いたリオンは、汗をかいたグラスを持ち上げながら淡々と言葉を重ねる。
「ただ、アイツが一番辛かった時にそばにいなかった野郎にアイツを渡すのは少し具合が悪い」
リオンの言葉にレオーラとマリン、シャクヤクが顔を見合わせる。ひとり、一番端でサンドイッチをつまんでいたミレイはあっけらかんと核心をついた。
「それ、シャンクスのこと?」
「……そうは言ってない」
「顔が言ってるよ?」
「ミレイ、ちょっと黙っておこうか。リオンが可哀想だからね」
「お前も一言多いんだよ!!」
レオーラに噛み付くように叫んだリオンに対し、堪えきれないとばかりに周囲が笑いをこぼす。それに気付いたフレイアは「どうしたの?」と不思議そうな視線をリオンに向けた。
「何でもない」
「なによ、皆で面白そうに笑ってるくせに。除け者にするつもり?」
「大丈夫、フレイアの話だから」
「え?」
「お前はいくつになってもガキみたいに感情で走りがちって話だよ!」
「なにそれ、失礼ね」
やいのやいのと騒ぎ始めた鏡面海賊団を見ながら、シャクヤクとレイリーは並んで笑みを浮かべる。
「若いっていいわね」
「まったくだ」