第14章 嵐の前の帰省
「何よ」
「足癖の悪さも似たのかと思ってな」
「うるさいなぁ。あの程度の輩に抜くほど、私の鏡面は安くないの」
そう言いながらフレイアは通り名の由来にもなっている自らの相棒を鞘の上からトントンと叩く。そんなところもそっくりだと言いながら笑うレイリーに返す言葉も無くなったのか、はたまた面倒になったのか、フレイアは溜息ひとつこぼして歩き始めた。
「賭場で見聞色を使うのは反則だぞ?」
「別にいいじゃない。一回だし……それに、どのみち元締めが儲かるように作られてるのが賭博でしょ。私たちが勝ったところで向こうは痛くもないわよ」
「そう言うな。スリルを求める場所だからな」
「それで借金してちゃあね」
まるで空白の期間を感じさせないテンポで話をするフレイアとレイリーの口元には、いつしかお互い笑みが浮かんでいた。それを見たマリンも少し嬉しそうに微笑みながら、二人の後をついていく。
三人がぼったくりBARに辿り着くと、そこには既にミレイとリオンも合流しており、店内は貸切状態になっていた。帰ってきたフレイア達の様子を見て、シャクヤクはタバコの煙を吐き出す。
「機嫌よさそうね、レイリー」
「まぁな。愛娘が顔を出してきたんだ、楽しくもなる」
「調子いいんだから……シャッキー、私にもお酒ちょうだい」
「はいはい。甘いのでいいわね」
カウンターに並んで各々グラスを持つと、誰からともなく「乾杯!」とグラスを突き合わせる。フレイアの隣に座ったレイリーは、酒のグラスに口をつけるフレイアを興味深そうに眺めた。
「お前と飲める日が来るとは、感慨深いな」
「それ言うの何度目? もう私だっていい歳なんだからね」
「ハハ、私からしたら子供だ」
「もう、クロさんと同じこと言うんだから」
下唇を突き出すフレイアに対し「クロッカスに会ったのか」とレイリーは食いついた。それを見てフレイアは小さく頷く。
「よろしく伝えてくれって言ってたよ」
「元気ならそれでいい。また会いたいものだが……お互いお尋ね者だからなぁ」
「お尋ね者がマリンフォードと目の鼻の先で生活してるのも、どうかと思うけどね」