第14章 嵐の前の帰省
白い屋根の建物に向かって歩き始めたフレイアに先導され、マリンは周囲を物珍しそうに眺める。シャボンディ諸島に来ても基本ぼったくりBARにしか行かなかったマリンにとって、この島らしい賑わいは初めてだった。
中に入ると、トランプをしている卓や花札をする卓など、プレイヤー対プレイヤーの勝負が繰り広げられていた。そこには目もくれずフレイアは丁半賭博をやっている場所に歩いていく。
「さて……丁か半か」
「半よ」
「お、フレイア」
「半。当たったら帰るわよ、レイさん」
白い髭を撫でながら振り返ったレイリーには目もくれず、フレイアは賽子の入った籠を持つ男に先を促す。ニヤリと笑った男が籠を持ち上げると、1と4をしめした賽子が顔を出した。
「すごいな、姉ちゃん。なァおれのも当ててくれよ。そこのツレの子も、ほら座って」
「ヒッ」
隣にいた男がマリンの脚に触れようとした瞬間、フレイアは男を睨みつける。その瞬間、男は泡を吹いて倒れた。
「おいおい、騒ぎを起こすな」
「変態オヤジが悪い」
「まったく……」
これ以上は続けられないと感じたのか、レイリーは勝った分の金を懐にしまって立ち上がる。しかし、倒れた男の仲間らしき男達がフレイアの肩を掴み、帰りの道を塞がれる。
「何の用?」
「オイオイ姉ちゃんよ、ひとの仲間を傷つけといてそれはねぇだろよ」
「有金全部置いてけ。そこの爺さんもな」
「どうするんだ、フレイア。お前が撒いた種だぞ」
面白そうにフレイアを見るレイリーは言葉ほどこの事態をどうとも思っていない。それを理解しているフレイアは溜息を吐きながら一歩足を踏み出す。
「お、素直に……ぃ!?」
男の側頭部めがけて振り上げたフレイアの蹴りがクリーンヒットする。一撃で脳震盪を起こし倒れた仲間を見て、取り囲んでいた男達が口をぽかんと開いた。
「で、次に寝たい奴は誰?」
「……っ」
動けなくなった男達に鼻を鳴らして、フレイアは賭博場を後にした。笑いながら後をついてきたレイリーを背中に感じて、フレイアはムッとした顔で振り返る。