第14章 嵐の前の帰省
「フレイア! ちょっと待ってよ」
「マリン……別にお守りなら要らないって」
「そういうつもりじゃないよ。ただ……その、心配だし」
だんだん尻すぼみになっていくマリンの言葉を聞きながら、フレイアは小さく息を吐いて足を止める。背後を走ってきていたマリンもそれを見て立ち止まった。
「私は貴女に一番BARで待ってて欲しかったんだけどね」
「分かってる、けど」
「……はぁ……まぁいいわ。行きま」
「見つけたぞ鏡面!」
「あれが25億の首か」
「はぁぁぁぁ……」
頭の悪そうな賞金稼ぎらしい男達の登場にフレイアは頭をおさえる。それを見たマリンも空笑いを浮かべていると、下卑た笑みを浮かべた男達はマリンにも視線を向けた。
「アイツも鏡面の船のクルーのはずだ」
「女二人しかいねェなら好都合だろ。人間屋に売るのもいいなァ」
「……バッカみたい」
フレイアが剣に手をかけた時、男達の一人が吹っ飛んで近くの木にのめり込む。男達はぎこちない動きで、飛んでいった男のいた場所に着地したマリンを見た。
「……フレイアを、誰に引き渡すっていった?」
冷たい眼差しで武装色を纏った拳を握るマリンに、男達は流石にまずいと悟ったのか数歩下がる。しかし、下がった先の足元に亀裂が走って飛び上がった。
「面倒くさいから気絶させる程度にしておきなさい、マリン」
「……はーい」
「あ、お、お助け」
「無理」
長い手足をしなやかに使いながら男達を残らず地面に叩き伏せたマリンは、唇を引き結んでフレイアを見た。それに対し、フレイアは軽くマリンの頭を撫でる。
「分かったわよ。一緒に行きましょう」
「……」
「天竜人にも喧嘩売らないから」
「……はぁ」
「そんな大きな溜息吐かなくても」
「いいもん。早くレイリーさん探しに行こう」
フレイアの手を引いて、賭博場の多くあるエリアに向けて歩き出した。
途中何度か絡まれながらも辿り着いた、シャボンディ諸島でも賑やかな地域。ガラの悪そうな男達の間を縫うように進み、フレイアは見聞色でレイリーの居場所を探る。
「……あそこね」