第14章 嵐の前の帰省
レオーラに叱られながら扉を開こうとしたフレイアが慌てて扉の前から飛び退る。同時に開いた扉の向こうから男が二人叩き出されてきた。そして、叩き出した本人であるシャクヤクが顔を出す。
「あらフレイアちゃん。久しぶりね」
「久しぶり、シャッキー。こいつら無銭飲食?」
「そんなところ。金目のものはもう奪ったから放置しておいていいわよ。ほら、入って」
「はーい」
平然と入っていくフレイアとレオーラの後ろで、マリンはそっとボロボロの男達に手を合わせてから店の扉をくぐった。いつでも変わらない店の様子にフレイアがホッと息を漏らしながらも、見聞色でレイリーがいないことを察すると「レイさんは?」とシャクヤクの背中に尋ねる。
「今朝、賭場に行くって出ていったわよ」
「ええ、まったくレイさんは……」
「ふふ、フレイアちゃんならすぐ探せるでしょう」
「それはそうだけど……」
もう、と言いながらフレイアは店を出て行こうとする。慌ててついて行こうとするマリンとレオーラにフレイアは「一人で行ける!」と言い残して扉を閉めた。
「……騒ぎ起こさないといいけど」
「フレイアちゃんだって船長として弁えてる部分はあるでしょう?」
「弁えてないから前回の時に天竜人を覇気でビビらせたんだよ」
レオーラがやれやれと言いたげた顔でカウンターに座ると、シャクヤクは彼の好みに合わせた酒を差し出す。それを飲み始めたレオーラを見つつ、マリンは「やっぱりついていく!」と言い残してフレイアの後を追いかけていった。
「フレイアちゃんより、あの子の方が大丈夫?」
「まぁ大丈夫でしょ。人間屋や賞金稼ぎにやられるほど弱くないよ」
「それは知ってるわよ」
タバコに火をつけながら「そういう問題じゃない」と言いたげにレオーラを見るシャクヤク。その視線に対し、レオーラはグラスを傾けながら笑って見せた。
「いつまでもお守りが必要な子供ってわけにもいかないだろ?」
「ひどい男」
「海賊だからね」