第14章 嵐の前の帰省
双子岬を出発してから約一ヶ月かけてエル・ミラージュはシャボンディ諸島に到着した。最短ルートで船を走らせてきたフレイア達は、久々の陸に大きく体を伸ばす。
「私はレイさんに会いに行くついでにコーティング頼みに行くけど、みんなはどうする?」
「お腹減ったし、僕も一緒に行こうかな」
「おれは適当に島を見てくる」
「わ、私はフレイアと一緒に……」
「私はリオンと一緒に島を回りたい! 前来た時は全然見る暇なかったもん」
頬を膨らませながらフレイアを見上げるミレイにフレイアは口笛を吹いて視線をそらす。以前シャボンディ諸島に来た際、騒ぎを起こしたせいで海軍に追われるように出て行ったことを思い出したからだった。
「ま、今回は何があっても穏便にね」
「海軍本部も近いんだから頼むぞ……」
「分かってるわよ! うるさいわね!」
全員に釘を刺されてフレイアがキレ気味に叫ぶ。周囲の人間が何事かと視線を送ってくるのに睨みを返しつつ船を降りていくフレイアに、一同はやれやれと首を振りながら後に続いた。
「中将ならどうにでもなるけど、フレイアが暴れてると前みたいに平気で大将が飛んでくるからなァ……」
「それはアイツも承知の上だろ」
「分かってて『一人くらいならなんとかなるわよ!』って言いそう」
「分かる」
「後ろ、聞こえてんのよ」
フレイアが元々悪い目つきを更に吊り上げて背後を振り返ると、男二人は「だってそうだろう」と言いたげに視線を送り返す。言い返せないフレイアは舌打ちひとつを残して再び前を向き直った。
「じゃあおれはこの辺で」
「あ、待ってよリオン」
ミレイとリオンと別れた後、レイリーが現在根城にしているシャッキー’s ぼったくりBARに向けて3人は足を進める。道中、賞金稼ぎに5度ほど襲われたり、フレイアが天竜人に舌打ちをしかけてマリンとレオーラに叩かれることはあれど、いたって穏やかに到着することができた。
「あー本当に胸糞悪い!」
「だから、胸糞悪くても静かにしててって言ってるでしょ」
「だって……」
「だってじゃありません」