第14章 嵐の前の帰省
「で、この後はどうするんだ?」
「新世界に戻るわよ。その前にシャボンディ諸島でレイさんに会うつもり」
「レイリーか。懐かしいな……よろしく伝えてくれ」
「勿論」
フレイアは正面からクロッカスを見上げながら微笑んだ。海賊をやっている以上、生きているうちにまた会えるという保証はない。だからこそ、目に焼き付けるようにクロッカスの顔を見る。それを感じたクロッカスは大きな手でフレイアの頭を撫でた。
「お前は相変わらずラフテルには行かないのか」
「うーん、まだ全然世界中には行けてないからね……目指してもいいけど目指さなくてもいいかなって感じ」
(ロジャー船長達との約束がある手前、行くべきだとは思うんだけどねぇ……)
フレイアはそう思いながら自分のクルー達を振り返る。ここが鯨の胃袋であることにいまだ感動しているミレイを囲むように集まっている、少ないながらも信頼できる仲間達。
(ま、あの子達が望んでるわけでもないし……急がなくてもいいか)
その視線に気付いたクロッカスは彼女の背中を軽く仲間の方に押し出す。
「さァ出て行け。新世界に戻る前にくたばるなよ、若造共」
「パラダイス如きで死なないわよ」
「油断するなってことだ」
「はーい」
フレイアが手を振りながらタラップを登っていく。それに続くように皆が船に戻っていく中、ミレイは丁寧に頭を下げた。
「ありがとうございました! 本、大切に読みます」
「あのじゃじゃ馬はよく怪我をするからな。気をつけてやってくれ」
「だーかーら! 子供扱いしないでよ!」
船の上からブーイングを飛ばすフレイアに向かって「おれからすれば子供だ!」と言い切るクロッカス。それを見たレオーラはクスクス笑いながら「たしかに」と呟いた。
「僕からしても子供だからね」
「これだから、子供時代知ってる奴らは……」
「ふふふ、頑張ります!」
ガッツポーズを残して船に走り乗ったミレイを見て、フレイアは甲板からクロッカスに手を振る。
「じゃあね! いつかまた会いにくる!」
「期待せずに待ってるぞ」
手を振り合って遠ざかる船。金属の通路を通りながら外に出たエル・ミラージュ号の面々はラブーンにも手を振りながらグランドラインへと帆を進めた。