第14章 嵐の前の帰省
「お前ももう少し娘としての可愛げを持て、フレイア」
「あのね……私もう35歳なのよ? この歳であの無垢さを持ってる方が問題でしょう」
「そうか、お前ももう35か……」
懐かしむように目を細めるクロッカスの瞳の中では、見習い三人がチョロチョロと走り回っていた光景が浮かんでいた。それを察したフレイアはバツが悪そうに笑いながら「だから子供扱いしないで」と呟く。
「まぁ何にしても。元気に旅をしてるなら結構だ。老いぼれの耳にもお前の悪行は届いてるからな」
「悪行って……大したことしてないんだけど」
フレイアの言葉にクルー達はヒソヒソと言葉を交わす。
「大したことしてないらしいよ」
「ちょっかい掛けてきた海軍も海賊船も全部沈めてるくせにね」
「ちょっかい出してくるのが悪いんじゃない」
「ハハハ、ファイにそっくりに育ちやがって」
豪快に笑うクロッカスにフレイアは唇を尖らせる。父親に憧れている身からすれば光栄な話だが、明らかに不名誉な点を言われている気がした。
「自分から喧嘩売ること稀なのになぁ」
「それで懸賞金が25億いくんだから、買いすぎだろ」
「勝てない相手に喧嘩売る方が悪い」
仁王立ちしながらそう言うフレイアにその場にいた全員が笑った。
実際、フレイアはどれだけ懸賞金が上がっても“女”というだけで舐められることがある。ビッグ・マムの存在が知れ渡った新世界でもそうした面は残っており、新世界に出たばかりのルーキーに喧嘩を売られることはしょっちゅうだ。それら全てを丁寧に捻り潰すフレイアの徹底ぶりを見れば更に懸賞金は上がる。永久機関の完成だった。
当然、七武海への誘いもあったものの海軍に協力するなんてお断りだと蹴ったフレイアは、海軍にとっても未だ取り締まる対象。フレイアの首をとって手柄を立てようとする者も少なくはない。