第14章 嵐の前の帰省
ミレイとリオンのやり取りを尻目に、フレイアは甲板を飛び出した。空を蹴り、島に着地するとそこにあった家の扉を叩く。
「クロさーん! 遊びにきたよ〜」
「分かっとる。嬉しそうな声をしおって」
「だって久々じゃない」
中から出てきたクロッカスはフレイアを見下ろしながら微笑んだ。
「元気そうだな」
「まぁね」
「お前達も……おや、一人増えたのか」
「は、はい!」
「そんな緊張しなくていいよ。荒っぽいけどいい人だから」
島に船を横付けし、他の面々も降りてくると、改めてミレイは頭を下げた。
「船医になりました、ガラン・ミレイです。よろしくお願いします」
「クロッカスだ。ようやく船医を入れたのか、フレイア」
「まだまだ勉強中ですけど……」
照れたように笑うミレイにクロッカスは「医者はそんなものだ」と言いながら豪快に笑う。そして、鏡面海賊団の面々を一人ずつ眺めると、ニヤリと笑った。
「いい顔つきの奴等になってきたじゃないか。来たばかりの時はヒヨッコ達だったのに」
「もう、いつの話よ」
「クロッカスさんとフレイアは、いつからの知り合いなの?」
興味津々と言った様子のミレイを見て、クロッカスはフレイアの頭を叩いた。
「このガキが赤ん坊の頃からの知り合いだ」
「え」
「また適当言って……クロさんが仲間になった頃は赤ん坊じゃありませんでした!」
フレイアが腕を組んで主張するのを見ながらミレイは目を白黒させる。その隣でクスリと笑みを漏らしたレオーラは解説を始めた。
「フレイアが海賊王の船で生まれて育ったのは、ミレイも知ってるでしょ」
「う、うん」
「クロッカスさんは、海賊王の船の船医だったんだよ」
「な、なるほど……」
尊敬の眼差しをクロッカスに向けるミレイに、クロッカスは満更でもない顔をしながら「ちょっと待ってなさい」と言った。そして家の中に戻っていくと、数冊の本を持って帰ってくる。
「私物だが、船医をする上で特に役に立った本だ。持っていきなさい」
「え!? いいですか!?」
「私はもう無茶に付き合う歳でもないからな。必要ない」
「ありがとうございます!!」
「若い子にいい顔しちゃって……」
そう揶揄うように言ったフレイアに対し、クロッカスは彼女の肩を叩いた。