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鏡面【ONE PIECE】

第2章 superfluous power


 青天の霹靂とも言うべき男の言葉に、子供たちはお互いに顔を見合わせる。不信感と売られるよりマシなのではないだろうか、という淡い期待が入り混じった視線。
「勿論、ただでとは言わねェ」
 そう言いながら箱の中から取り出されたものに、フレイアの心臓がドクリと脈打った。どこか見覚えがある、でも知っているものとは形も色も違う。
 手を強く握りしめながら、頭に響く拒絶の声に耐える。
(バギーの時といい、とことん海に嫌われてるのね)
「まあ、簡単に言えばこの悪魔の実を食べた奴を仲間にしてやろうって話だ」
 得体のしれないものへの恐怖心からか、子供たちは動こうとしない。そんな様子に痺れを切らしたのか、実を持った男が子供たちの間を歩き始めた。
「売られた先に待ってる地獄に比べたら良い生活が送れる道だと思うんだがなァ」
「……」
「誰もいないのか。じゃあこっちが勝手に決めるだけだ」
 丁度部屋の中心部で立ち止まると、部屋全体を見渡し始める。その視線から逃れるように、俯いたり横を向いたりする子供達をしかめっ面で確認した男は、ゆっくり一人に向かって歩を進める。
「おい」
「え……」
 フレイアの傍で俯いていた妹だという少女が絶望に満ちた顔を上げる。
「お前の姉は逃げ出した。お前はその責任をとらなくちゃならねェよな?」
「え、あ、いや」
「なに、別に痛いことじゃない。そんな怖がらなくて……」
 涙を流して抵抗するも無遠慮に伸ばされた男の手を、隣から伸びたフレイアが叩く。鋭い視線が向けられるのも無視して、泣いている少女を背に庇うと、海の声を無視して叫ぶ。
「そんなに能力者が欲しいなら、貴方が食べればいいでしょう」
「テメェ……おれに得体のしれないこんなものを食べろって言ったか?」
「あら、怖がることじゃ」
 ないんでしょう、という言葉は首を掴まれたことで口から出ては来なかった。男の血走った眼を息苦しさに耐えながらフレイアが睨む。
(ああ、こんな男はやっぱり許容できないな……でも、許容しなくちゃいけないのかな。ね、お母さん……)
「テメェには捕まえた時に部下を4人もやられたんだ。せいぜい地獄に送ってやろうと思っていたが、気が変わった。他人に任せず、おれの下で一生こきつかってやる」
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