第13章 A straw hat
「シャン」
『どうした?』
「…………何でもない。これからグランドラインに戻るわ」
『お前、もしかして一人か? 気をつけろよ』
「馬鹿言わないで。懸賞金いくらだと思ってるのよ」
『25億6千万ベリー』
「正確に言われるの、ちょっと気持ち悪いわね」
ひでェと言いながら嘘泣きを始める電伝虫に向かってフレイアは舌を突き出す。そして「まぁそういうことだから」と言いながら笑ってみせた。
「そんじょそこらの海賊には負けないわよ」
『そうだな……』
「伝えたいことはそれだけ。じゃあ切るね」
『おう、またな』
「うん、また」
静かになった電伝虫をポケットにしまい直し、フレイアはそっと胸元を握りしめた。首から下げている母の形見の指輪に触れると、海の声がゆっくり流れてくる。
「明日はシケか……さっさと帰ろ」
そう決めたフレイアはエンジンに火をくべる。風に流される髪を耳にかけながら、一瞬背後を眺めた。
(待ってるわよ、ルフィくん)
そう心の中で呟きながら、フレイアの脳裏にはルフィと同じくらいシャンクスの姿が映っていた。10年前の約束はまだ果たされていない。ビブルカードを持っていない者同士、新世界で会える確率は少ない。それでも予感がしていた。
自分達の約束が果たされる日はそう遠くないと。