第13章 A straw hat
「!」
「そんなつもりで助けてくれたんじゃねェ!!! 生かしてもらって死ぬなんて、弱ェ奴のやることだ!」
「じゃあ他にケジメつける方法があんのか!!!」
掴み合い怒鳴り合うサンジとルフィを見て、フレイアはそっと微笑む。そして若い二人に空気を読まずに割って入ろうとするパールを見た瞬間、その場に飛び出していた。
横の方でギンが動き出したのを見ながらも、その数歩先を行く。戦場に蒼い風が吹き、そして時が止まる。
「!?」
攻撃されたはずのパールすら最初は何をされたのか気付かなかった。ただ、自らが誇る鉄壁の鎧がバラバラに壊れていくのがスローモーションのように映る。そして、体に幾重にも熱が走る。
血を吐きながら倒れたパールをその状態にしたのが、すぐそばに立つフレイアだと周囲が認識したのはフレイアが刀を鞘に収めた時だった。
「な、な……」
誰も目に追えなかった動き、誰も壊せなかった盾を一瞬で切り刻んだ技量に全員が口と目を閉じられなかった。圧倒的な実力を示した本人だけは、何事もなかったように踵をかえす。
「悪かったわね、バンダナくん。ちょっとムカついたものだから。もうこれ以上は介入しないから、好きにやって」
そう言ってギンの肩を叩いたフレイアは倒れているゼフの元にゆっくり歩いて行く。空気が固まっているのを動かしたのは「何してんだ!!」というクリークの叫び声だった。その声で再び動き始めた戦場には興味を無くしたようで、自分を助け起こすフレイアを見てゼフは目を細める。
「手は出さないんじゃなかったのか?」
「……私、海賊にはニ種類いると思うの」
ゼフに怪我がないのを見たフレイアは隣に座りながら戦場を眺め始めた。そしてゆっくり言葉を続ける。
「生き様が海賊な奴等と、略奪を行うから海賊と呼ばれる奴等。私は後者を海賊とは呼びたくないわ。だからちょっとムカついただけ」
(空気読めないことにもムカついてたしね)
心の中でそう付け加えながら、フレイアはそっと目を閉じた。
ーー死ぬことは、恩返しじゃねェぞ!!!
ルフィの言葉を噛み締めながら、ゆっくり空を見上げて目を開く。
「私も同感よ」
だから何があっても生きなきゃいけない。私は……生かされたのだから。