第13章 A straw hat
二人がそうして話す間にも戦闘は進む。サンジの足技を見たフレイアは小さく口笛を吹きながら柵に座った。
(赫足のゼフ譲りかしら……強い。あれで武装色の覇気を覚えれば……)
船が燃える燃えないで騒ぎになっているのを見ながら呑気に考えを巡らせていたフレイアは、背後に不審な動きを見て視線を動かした。その先でゼフの義足を折るギンを見て取り、目を細める。
「もうやめてくれ、サンジさん。おれはあんたを殺したくねェ!!!」
「ギン!」
「ギンてめェ……!!」
ゼフに銃を向けるギンと、その銃を自分に向けろというサンジ。そして暴れ出したパール。戦局と各々の言葉を聞きながら、フレイアはそっと刀の柄に指をツーっと走らせた。
(抜くのは簡単……でも、私が参加したらパワーバランスが壊れるし……)
ボロボロになりながらも船を守るという自らの信念を曲げないサンジと、そんな彼を前に「これがおれ達の戦い方だ!!!」と宣うギン。両者の意見が交わることはない。並行線の中、ゼフに救われた過去を口にしたサンジは真っ直ぐ立ち上がり居住まいを正した。
「たかがガキ一匹生かすためにでけェ代償払いやがったクソ野郎だ。おれだって死ぬくらいのことしねェと、クソジジイに恩返しできねェんだよ!!!」
サンジの言葉を聞いて、フレイアの脳裏に懐かしい記憶が蘇った。
ーーまた二年後、な。
そう言い残してフレイアの知らぬところで死んだ父親。そして、その死によって自由を得て今海賊をしている自分。
(もし、私が彼と同じ立場だったら……)
そんなフレイアの思考を止めたのは大きな破壊音だった。ヒレの部分がバキバキに壊れているのを見て、それを行ったであろうルフィをフレイアは見つめる。
「てめェ雑用!! なんのつもりだ!!」
「この船沈める」
「……な!?」
皆が目を見開き、怒鳴り声を上げる中、ルフィだけは普段と変わらない様子を見せた。見聞色でその中に仄かな激情を感じとったフレイアは静かにことの成り行きを見守る。
「てめェがおれの受けた恩のデカさとこの店の、何を知ってるんだ!!!」
「だからお前はこの店のために死ぬのかよ。バカじゃねェのか!?」
「なんだと!!?」
ヒートアップしたルフィはサンジの胸ぐらを掴みながら叫んだ。
「死ぬことは恩返しじゃねェぞ!!!」