第13章 A straw hat
「チッ」
舌打ちをこぼすクリークなど眼中にないとばかりに、フレイアは再びバラティエに戻った。それを見たコックたちが場所を開けるものの、フレイアは気にすることなく微笑んだ。
「さァ来るわよ。どうするの?」
「……おっさん! あいつら追い払ったら、おれ雑用やめていいか?」
「……! 好きにしろ」
ルフィとゼフの話を片耳で聞きながら、フレイアは見聞色の覇気でクリークたちの様子を探る。
(本当にバカな男)
ミホークのことを悪魔の実の能力者だと思っているクリークの言葉を聞きながらフレイアはこめかみを押さえる。この話を聞いたらかの黒刀も涙を流すだろうと思いながら、そっと自分の刀を見下ろした。
(この世界で本当に怖いのは能力者なんかじゃないんだけどね……そもそもロジャー船長だって能力者じゃないし)
「お前が出れば一瞬でカタがつくんじゃないのか? 鏡面」
ルフィが突っ込んでいき、開戦の狼煙が上がった海を見つめながらゼフが問うた。それに対しフレイアはあっけらかんと「当たり前じゃない」と答える。
「あいつ多く見積もってもニ千万ベリーが関の山でしょ? だからいやよ」
「!?」
ニ千万ベリーをまるで雑魚のように扱うフレイアに周囲がどよめくも、本人は気にしない様子で手すりにもたれかかる。
「酒の席の自慢話にもならない武勲なんていらないわ。出来て当たり前のために抜く刀も持ってないしね。だから、まだケツの青いひよっこにあげるの」
「……おれの船が傷つくだけなんだがな」
「ははは、船くらい修復できるじゃない。安いもんよ」
「修復すんのはてめェじゃねェだろうが、若造が」
そう吐き捨てるゼフに周囲のコック達は「オーナー!!?」と体を震わせるが、対するフレイアは大きな口を開けて笑った。フレイアにとってゼフの言葉は事実だ。それ以上でもそれ以下でもない言葉に怒る理由はなかった。