第13章 A straw hat
対峙する二人の剣士をフレイアは焼き付ける様に見つめた。皆固唾を飲んで見守る中、ミホークはそっと首元のネックレスになっている十字架型の小刀を抜く。
「オイ、何のつもりだそりゃあ」
「おれはうさぎを狩るのに全力を出すバカなケモノとは違う」
(それ私への当てつけか?)
一瞬引っ掛かりを覚えたフレイアは眉間に皺を寄せるが、小馬鹿にしたミホークの態度にキレたゾロが突っ込んでいったので直ぐ姿勢を改めた。
「死んで後悔すんじゃねェぞ!!!」
「井の中の吠えし蛙よ。世の広さを知るがいい」
渾身のゾロの技をミホークは静かに小刀の鋒で止めて見せた。それに対してゾロが目を大きく見開きながら動揺する。3本の刀を強く、器用に使い高速で斬りつけるもミホークにはその先すら届かない。反対に小さな振りひとつでゾロは背中をつけた。
信じられないものを見る顔で、しかし死にかけの闘志を燃やしてゾロは再びミホークに向かっていく。【海賊狩り】としてイースト・ブルーに名を馳せるゾロでも微塵も届かぬその領域に、その場にいた殆どが言葉を失った。
「おれは、勝つために……!!! この男に勝つためだけに!!!」
「何を背負う。強さの果てに何を望む。弱き者よ……」
「アニキが弱ェだとこのバッテン野郎ォ!!! てめェ思い知らせてやるその人は……」
今にも真剣勝負に飛び出していきそうな男達を見つけてフレイアが一瞬視線を向けると、ルフィがその二人の頭を押さえつけた。
「ちゃんとガマンしろ……!!!」
激情をおさえている表情で、しかし絶対に手を出さないという意志を見せるルフィを見てフレイアは小さく頷く。
「分かってるじゃない」
呻き声を上げて再び飛ばされたゾロを見てフレイアはそっと目を閉じた。
「死合いに手を出すなんて何人たりとも許されることじゃないわ」
「虎!!!!狩り!!!!」
渾身のゾロの一撃。その隙間を縫う様に伸ばされた剣先はゾロの胸に突き刺さった。しかし、彼は一歩も引くことなくそこに留まり続ける。