第13章 A straw hat
「おいおい、何の冗談だ……」
「なんでお前までこんなところにいやがる」
「オーナー、あの女のこと知ってるんですかい!?」
部下たちの視線を受けたゼフはやれやれと言いたげに口を開く。
「今やその世界では伝説となった【剣聖】……その愛刀を受け継いだ女剣士。鷹の目同様、剣の世界では超がつく実力者だ」
「あら、褒めても何も出ないわよ料理長」
よっと声を出しながらバラティエからミホークの船に軽々乗り移ったフレイアは、腕を組んでミホークを見下ろした。
「何やってるはこっちの台詞よ。イースト・ブルーよ、ここ」
「先ほども言ったろう。ヒマつぶしだ」
「私はバカンス。船長やってると肩凝るでしょ」
「仲間はどうした」
「私がいないとグランドラインで生き残れない様なヤワを仲間にしてるつもりはないわよ」
暗に仲間をグランドラインに置いてきたと言っているフレイアにクリークの船員がゾッと背中に汗を流す。あの魔の海……自らの船長すらボロボロにされた場所に残され、生き残る仲間。そしてそれを率いる船長。次元の違う会話に全員が唖然とする中、ゾロだけは爛々と輝く瞳で一歩前に出た。
「おれはお前に会うために海へ出た!!」
「だって、ミホーク」
「貴様だろう」
「お前だ! 鷹の目!」
「ほら」
フレイアのしたり顔を視界から外すようにゾロを見たミホークは静かに問うた。
「何を目指す」
「最強」
端的に言い放ったゾロにフレイアは微笑みながらも鋭い視線を向けた。先ほどクリークの口にした同じ言葉とは重みが違うと感じ取ったからだ。
「ヒマなんだろ? 勝負しようぜ」
ゾロの言葉に周囲がどよめく中、ルフィとフレイアだけが静かにことの成り行きを見守る姿勢になる。そして、ミホークは横に視線を飛ばした。
「鏡面」
「この私を露払いにするつもり? アンタが売られた喧嘩はアンタが買いなさいよ。それに、私は手加減出来ないからダメよ」
(ああいう生きの良い子は潰しちゃダメだもの)
フレイアに動く気が一切ないと察したミホークは、小さく息を吐いて立ち上がった。
「哀れなり、弱き者よ。いっぱしの剣士であれば、剣を交えるまでもなくおれや鏡面とぬしの力の差を見抜けよう。このおれに刃をつき立てる勇気は、おのれの心力か……はたまた無知なるゆえか」
「おのれの野望ゆえ、そして親友との約束の為だ」