第13章 A straw hat
「ゼフの航海日誌を手に入れ、おれは再び海賊艦隊を組み”ひとつなぎの大秘宝”をつかみ、この大海賊時代の頂点に立つのだ」
クリークの言葉にフレイアが黙って半歩片足を下げた瞬間、逆に一歩前にでた者がいた。
「ちょっと待て!! 海賊王になるのはおれだ」
「! なっ……雑用!」
「おい引っ込んでろ! 殺されるぞ!!」
「引けないね。ここだけは!」
ルフィの自信に満ちた瞳にフレイアはクスクス笑みを零しながら刀から手を離した。
「そうこなくちゃ」
小さく呟き、完璧に傍観者をきめこんだフレイアは気配を極限まで消して壁にもたれた。
(さァ見せてもらうわよ。シャンがその帽子を預けてもいいと思った男の姿)
「ハハハ……派手なことするわねミホークの奴」
真っ二つになったガレオン船の影に見知った気配を感じ、フレイアは空笑いを浮かべた。どこか暇そうな様子に、先程ゼフの言った「昼寝の邪魔をした」という理由に現実味を感じる。
「普通の人間と変わらねェぞ……特別な武器を持ってるわけでもなさそうだ」
「武器なら背中に背負ってるじゃねェか!」
「そんな、まさか!!」
「……じゃあ、あの剣一本で大帆船をブッた斬ったとでも!?」
「そうさ……”鷹の目の男”とは大剣豪の名。奴は世界中の剣士の頂点に立つ男だ」
ゼフの言葉にフレイアはぼんやりとミホークを見つめながら首を傾げる。
(そういえばお父さんとミホークってどっちが強いんだろ)
もうこの世にいない人間と戦わせようがないものの、ふって湧いた疑問に好奇心が刺激される。ミホークとフレイアは真剣勝負をしたことがない。正しくは決着がつく前に邪魔が入り、その後は何となく剣を交えることがなかった。
(お父さんから受け継いだ私の剣とミホークの剣……いつかやってみたいなァ)
ムクムクと膨らんだ闘争心が僅かに彼女の体から漏れる。それに対して、ミホークはピクリと眉を動かした。
「こんなところで何をしている、鏡面」
「あら、バレちゃった」
「!?」
ミホークに声をかけられた女がいる――その事実に、フレイアのそばにいた者たちは彼女から離れる様に数歩下がる。【鏡面】という言葉に反応したのはゼフとゾロの二人だけだった。