第12章 覚悟と夢
「オイテメェら何やってんだ! 戻ってきた金の卵をみすみす逃すつもりか!?」
「やっちまえ! 4人だろ!」
自らを鼓舞するように大声をあげながら男達が武器を取り出す。それを見たフレイアはニヤリと笑うと「シャン!」と言いながら後ろを振り返った。呼ばれたシャンクスは自分を指さしながら首を傾げる。
「どうした? 助けが必要か?」
「要らないから。この子預かっといて」
「え、あああ!?」
そう言ってフレイアはミレイをシャンクスに向かって投げる。叫び声と共に飛んできたミレイをシャンクスは片腕ながら軽々と受け止めた。目を回している少女を尻目にフレイアは「リオン」とだけ声をかける。それだけで呼ばれた本人は察したらしく、ずっと受け止めていた斧を軽々と返すと、くるりと敵に背を向けた。
「いいのか?」
自分の方に向かってきたリオンにシャンクスが尋ねると、リオンは肩を竦めた。
「一人でやりたいんだと」
4人のつもりが、向かってくるのがフレイア独りだと分かったためか男達はニヤニヤと笑いながらフレイアに話しかける。
「なんだ、根性なしの男共だなァ」
「おいお嬢ちゃん、今なら許してやるから……」
「……うるさい」
フレイアはそう一言言い放つと、半歩足をひいて柄に手をかけた。そして、目にも止まらぬ神速抜刀で刀を抜く。
「!?」
突然吹いた一陣の風に男達が目を見開いたものの、誰にも傷がついておらず顔を見合わせる。
「な、なんだ脅かしやがっ」
「お、おい!!」
「あ?」
最後尾にいた男があげた悲鳴に一同が港の方を振り返る。すると、レッド・フォースとエル・ミラージュに横付けされるように止まっていた船が大きくマストを傾けて崩壊していく。自分たちの船が大きな音を立てて壊れていくのを、全員が唖然と見送り、ぎこちなく視線をフレイアに戻した。そこには透明な刀を構えたフレイアが無表情で立っている。自然な立ち姿ながら一切の隙はない。
「あ、お、お前まさか」
「あ? 知ってんのか!?」
男の一人が腰を抜かしながら後退る。その異様な怯えようにオルクも額に汗を流しながら尋ねた。
「透明な刀身の刀を使う剣豪……賞金9億8千万の【鏡面】だよ!!」