第12章 覚悟と夢
「このガキさっきから意味のわからねェことをベラベラと!」
ミレイの腕を力強く掴み上げたオルクが急に顔を顰めて腕を離した。赤黒くなった手を押さえるオルクを見て、仲間達は「何をしたテメェ!」とフレイアにいきりたつ。フレイアは鞘に入ったままの刀を片手で持ち、依然ミレイに問いかけ続けた。
「私は?」
「……私は」
ミレイは手形のついた自分の手首を握りながら、震える声を出す。
「私は……っ!」
ミレイの頭の中に、無理やり封じ込めていた記憶が浮かんでは消える。
「自由に……なりたい。自分のために」
「……そう」
ここにきて初めてフレイアは小さく笑った。それを見た2メートル男が、身の丈ほどありそうな斧をフレイアに叩きつけようとする。ミレイが小さく悲鳴をあげる隣で、しかしその斧はフレイアに振り下ろされる前に止まった。
「なっ!?」
「……」
数十分の一ほどしかサイズのないナイフが斧を受け止める。それの持ち主であるリオンは、片手をポケットに入れたまま、しかしナイフも体の軸もブレることなく斧を軽々と受け止めて見せていた。
「そう……じゃあ、ミレイ」
背後で行われるそんな応酬も関係ないと言いたげなフレイアは変わらずミレイ一人に話しかけた。
「貴女、その夢を私の隣で叶える覚悟はある?」
「……」
「ミレイ!」
父親の怒声と共に伸ばされた手から逃げるように、ミレイはフレイアの方に飛び込んだ。それをしっかり受け止めたフレイアは、そっとミレイの頭を愛おしげに撫でた。
「いいのね?」
「うん、うん……! 連れて行って!」
「……上等」