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鏡面【ONE PIECE】

第12章 覚悟と夢


(シャンのところが揉めてるのかしら……)
 怪訝に思いながらフレイアは喧騒の方へと足を進める。うるさいのに気付いたのか、ミレイもおずおずと顔をあげた。フレイアの足が人だかりに入ろうとしたその瞬間ひときわ大きな声が空を駆ける。
「ミレイがいたって本当なのか!? どこに行った!?」
「……お父さん……?」
 ミレイの赤い瞳に久々に光が宿った。そして、フレイアの手から飛び降りると人混みの中心に向かって走り出す。フレイアは言い争っている声の片割れが自分の腹心であることを察して目を細めた。
「だから、アンタの家に」
「お父さん!」
「ミレイ!」
 リオンの胸倉をつかんでいた男は、娘を見ると切羽詰まった様子で少女の腕を掴んだ。その力強い様子に一瞬ミレイの身体が強張る。それを見止めたリオンも顔を顰めて咎めようとするが、それよりも早く父親らしき男はミレイの手を引いて早歩きで去っていこうとする。
「丁度良かった。仲間が大怪我を負って困ってたんだ。お前がいればもう心配はないな」
「お父さん、いた……」
「まったく、負け戦の代償にお前を取られた時はどうしようかと思ったが……自力で帰って来るなんて流石おれの娘だな」
「お父さん……」
「さぁ港に行こう。ほら、早く歩いて」
「おい、それくらいにしておけよ。子供が怯えてるぞ」
 男の肩を掴んだのは、シャンクスだった。突然現れたシャンクスに男は目を白黒させながら周囲を見る。船長についてきたベックマンに、慌てて人混みから追いかけてきたフレイアとリオン。それぞれの険しい顔を見て「誰だ、テメエら」と男は不快感をにじませる。フレイア達を見たミレイはホッとした顔をしつつ口を開いた。
「あのね、フレイア達が私を連れてきてくれたの」
「……それはどうも。だが、今は急いでててね。お礼ならあとでゆっくり」
「礼はいらないからさ、ひとつ聞かせてもらえないか」
 フレイアが一歩踏み出しながら笑みを見せる。その顔が明らかに怒っているのを見て、シャンクスは男の肩から手を放して身を引いた。前に出てきたフレイアに一瞬笑った男は小馬鹿にしたような声を出す。
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