第12章 覚悟と夢
カリーダ島。
新世界の片隅にある小さな島には数十人が暮らす村と、基本的に漁船しか寄らない港のみが存在する。そんな田舎の港に、海賊船が二艘も船をつけたのを見て、村民の多くがその様子を見に来た。
「本当にココであってるのか?」
「ミレイの言葉が正しければね」
「あってるよ。見覚えあるもん……お父さんとよく海を見に来てた港」
大きな目を細めながらそう言うミレイにフレイアとシャンクスは視線だけを合わせる。これから彼女を待っているものが、感動の再会になるか、知らなくてもいい現実との対峙になるのかはまだ誰にも分からない。しかし、後者の確率が高いことを、大人達は理解していた。
「……本当にいいのか?」
はしゃいで「早く降りたい!」とレッド・フォースの甲板を駆け回る少女を横目にシャンクスが尋ねる。その視線に僅かに咎めるような意味が含まれているのを感じ、フレイアは小さく息を吐いた。
「選択肢を与えられないまま帰る場所も失うのと、選択肢を残したまま居場所を失うの、どっちがいいかなんて分かりきってるわよ」
「……」
それは自分の話か、と尋ねたい気持ちを飲み込みシャンクスはフレイアから視線を外した。かつての妹が離れ離れだった10年をどのように過ごしたのかは分からない。しかし、ひとつ確かだったのは……彼女がひとりで帰る場所もなく生き抜いたということ。
シャンクスはフレイアの父親であるファイの処刑にも立ち会っていた。たまたま耳にした本当かガセかも分からない噂だった。それほどまでにあの【剣聖】はひっそりと人生に幕を下ろした。
その場にいたのは本当に数えるほどの人間であり、フレイアがいなかったのも確認済だ。
(まァ……ファイさんが自分の最期を娘に見せようなんて思わないのは分かってたけどな……)
「……ところでよ」
「どうした、ヤソップ」
「なんで当たり前みたいに鏡面とチビちゃんはうちの船にいるんだ?」
「行き先同じだったからだろ」
あっけらかんと疑問に答える船長に、ヤソップは「ああ……そうか」と半笑いで返事をする。これ以上深く尋ねたところでマトモな答えは返ってこない。長年の経験がそう言っていた。