第11章 再会は降ってくる
ルウの問いにシャンクスは「まぁ、思わなかったこともねェけどよ」と歯切れの悪い返答をする。頭を掻きながらバツが悪そうな顔をするシャンクスを見て、レオーラはクスリと笑った。
「フラれた女を追いかけるのはプライドが許さなかった?」
「え、は?」
「フラれたのかお頭」
「道理で……」
「ちげェよ!」
「違わないでしょ。フレイアのこと誘って断られたって聞いたし」
「このお喋りめ」
再びフレイアの頬をつねるシャンクスに、フレイアも流石に眉間に皺を寄せながら唸った。横からヤソップに「やめてやれよ」と言われてもシャンクスは柔らかいフレイアの頬を弄り続ける。
「大体こんなちんちくりん……」
「ちんちくりん?」
「いや、いいサイズあるぞ」
「どこ見てんだ!」
威嚇するようにフレイアを自身のマントで隠すシャンクスを見て、レオーラはヒソヒソと隣にいたヤソップに話しかけた。
「素直じゃないよねェ」
「知ってるか。お頭、娼館で選ぶ女は大体吊り目の女なんだよ」
「マジ?」
「うるせェェ! 余計なお世話だろうが!!!」
「んん……しゃん、うるさい」
「お前のせいだっつーの!!」
髪と同じくらい顔を真っ赤にして怒鳴るシャンクスの声が船内中に木霊す。遠くで飲んでいたクルーまでシャンクスの様子を見てニヤニヤ笑うのを見て、キッとシャンクスが睨みを効かせるが効果はなかった。
「何やってんだお前ら」
「……」
ようやく帰ってきた副船長二人を見てシャンクスが「ベック、どうにかしろコイツら」と手で顔を煽ぎながら言う。ニヤニヤ口元を緩める幹部達と自らの船長の拗ねた様子を見て、粗方のあらましを察したベックマンは真顔で口を開いた。
「さっさと認めたほうが楽だと思うぞ」
「お前も敵か!!」
フレイアを起こさないように体は動かしていないが、その分手をバタつかせているシャンクスを尻目にリオンは唇をへの字に曲げる。それを見たマリンは小さな声で呟いた。
「リオン、顔怖い」
「うるせェよ。いつものことだろ」
「いつもより怖い」
「……」
「別にフレイアはそういうつもりで赤髪の船に飛んでいったわけじゃないと思う」
「慰められてんのか、おれ」
マリンは「そうじゃなくて……」と言いながら酒の入ったグラスをくるくる回す。その横で大きなエビに齧り付いていたミレイが口を開く。