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鏡面【ONE PIECE】

第11章 再会は降ってくる


「しかし、なんでまたフレイアの船に?」
 副船長の背中を見送ったシャンクスは酒を傾けながらレオーラに尋ねた。それに対し、レオーラはちょっと困ったように眉を下げて口を開いた。
「うーん、どこから話したもんかなァ」
「いや、答えにくいなら別にいいけどよ」
「そうじゃなくて……うーんと、僕に相棒がいたのは覚えてる?」
「あーあの強い剣士の男だろ。名前までは流石にだけどな」
「アイツが死んだから、オヤジの船を降りたんだ」
 昨日の朝食のメニューでも教えるようにあっけらかんと口にされた情報に、シャンクスを始め周囲にいた面子が目を見開く。しかし周りの様子は慣れたものだと言わんばかりに、レオーラは酒を呷りながら笑った。
「あれはロジャーが処刑されて半年くらい経った頃だっかなァ……何でもない戦いでアッサリとね。僕があそこにいたのは、エルがいたからだった。それ以上の理由はなかったからね。エルの墓守をするために死体担いで故郷に帰ったんだ」
「じゃあ一度は船を降りたってことか……」
「そういうこと。そこをフレイアに見つかってね。2年がかりで口説かれたわけ」
「2年!?」
「そ。まったく、貴重な時間を……本当意味わかんないよねェ」
 呆れたように言いながらもレオーラの口元に浮かんだ笑みを見れば、それが今の彼にとって嬉しいことであったのは一目瞭然だ。シャンクスは「2年か……」としみじみ噛み締めながら、膝で眠り続けるフレイアを見下ろした。
 記憶よりも伸びた髪は艶を纏ってひとつに結ばれている。前髪の隙間から覗く表情は、どこか険しく、彼の父親を思い出させた。女性らしい曲線を描く体つきだが、袖口から覗く手に洒落っ気はなく、剣を握るのに邪魔にならぬよう爪も短く切り揃えられていた。
「……」
「最後に会ったのはローグタウンだっけ?」
「ああ……懐かしいな」
 咄嗟に口にした誘いを思い出し、シャンクスは小さく笑いをこぼした。もし少女があの誘いに乗っていたら、今頃こんな光景は当たり前になっていたのだろう……そんな感傷が胸をちくりと刺す。
「海賊王の処刑ってことはお頭も10代だろ。そんだけ長い間一度も会おうと思わなかったのか?」
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