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鏡面【ONE PIECE】

第11章 再会は降ってくる


 夜更け、鏡面海賊団の中でいち早く潰れたのはフレイアだった。横にいたシャンクスの肩にもたれてすうすう寝息を立てる女に、シャンクスは優しい眼差しで自分の膝にその頭を落としてやる。それを見たヤソップは小さく口笛を吹いた。
「お頭、惚れてんのか?」
「……馬鹿言え」
「間があったぞ〜お頭」
「顔赤いぞ」
「うるせェ!! 酒のせいだ!」
 揶揄われた腹いせか、フレイアの頬を軽くつねるシャンクス。そんな彼らを視線から外すようにリオンが立ち上がった。
「どこ行くの?」
 小さくタバコの箱を振ってみせる男はそのまま振り返ることなく自船に戻って行った。
 鏡面海賊団の船――エル・ミラージュ号の甲板はレッド・フォースと正反対に静まり返っている。そのさらに端の方で柵にもたれかかりながらタバコに火をつける。小さな炎に照らされたリオンの表情は、闇と同じくらい暗かった。
「ご一緒しても?」
「……どーぞ」
 自分を追いかけてきたであろうベックマンを横目にリオンは横を指し示した。タバコを咥えるベックマンに向かってリオンはライター差し出す。
「悪いな」
「別に」
「子供に気を遣ったのか」
「フレイアがうるさいんでな」
 やれやれと言いたげなリオンの言葉にベックマンはフッと小さく笑った。
「船長に惚れてんのか」
「別に……ただ……」
 チラリと隣の船の喧騒を見ながら、リオンは紫煙を吐き出した。暗闇の中でもくっきり見える煙は甲板の光を淡くする。
「面白くないだけだ」
「ハハハ」
「ところで、昼間は悪かったな。うちの船長が突っ走って」
「構わんさ。今日は退屈してたところだったからな……ところで、少し聞いていいか」
 突然真剣な眼差しを向けるベックマンにリオンは片眉を上げながら「どうぞ」と答えた。
「あのミレイとかいう少女……何か訳アリか?」
「まぁな」
 思案するように眉間を揉んだリオンは、しかしゆっくりと口を開いた。
「あの子はおれ達に喧嘩売ってきた海賊船に奴隷として乗ってた……悪魔の実の能力者だ」
「……」
「フレイアは彼女の願いを聞いて、家に帰してやると約束した。しかしそのあと、去り際に向こうの船長が吐き捨てたんだよ『帰る場所なんかテメェにはねェ』ってな」
「……つまり」
「彼女は売られた可能性が高い」
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