第11章 再会は降ってくる
「……ばか、ばかばかばか」
「馬鹿馬鹿言うなよ」
「うるさい! 馬鹿以外に何言えばいいのよ!」
涙こそ出ていないものの、顔全体を歪めて今にも雫をこぼしそうなフレイアを見てシャンクスはバツが悪そうに視線を落とす。
「おれは……後悔してねェよ」
「……馬鹿」
「まだ言うか!?」
「馬鹿馬鹿ばーーか!!!」
「あのなぁ!! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!」
「はァ!? 利き腕落としてくる馬鹿より馬鹿なつもりないけど!?」
「……なにやってんだ、アイツら」
先ほどまでの感動的なシーンはどこへやら、突然子供の喧嘩のように馬鹿馬鹿と言い合い始めた二人を前に、ヤソップは呆れた顔を向ける。ベックマンがこめかみを抑えて溜息を吐いていると、レッド・フォースに横付けするように一艘の船が近づいているのが目に入った。
ヤソップやルウ達が鋭い目を向けるのに対し、その船に掲げられた海賊旗を見たベックマンは「鏡面の船だ」とそれを制する。レッド・フォースよりひと回り小さな船の甲板では3人の男女が立っていた。
その中の一人――黒髪の青年は、死屍累々の中央で言い争いをする男女を見た瞬間、彼らに向かって何かをぶん投げる。綺麗な軌道を描いてフレイアの後頭部に直撃したトンファーは、カラカラと金属音たてながら甲板に落ちた。
「いったぁぁぁ!!!」
「お、おい大丈夫か?」
「……」
無言でレッド・フォースに飛び乗ってきた青年は頭を押さえている自らの船長に近づくと、更に拳を頭に叩き落とす。悶絶するフレイアを前にシャンクスはオロオロと二人の間に入った。
「ちょっと待てお前」
「なに? うちの船の船長が馬鹿やったことを叱ってるんですけど?」
「確かに馬鹿だったけどやりすぎッつーか」
「ば、か馬鹿言う、な!」
痛みに耐えながらも馬鹿にはきっちり反応したフレイアは涙目で青年を睨みつけた。
「何すんのよリオン!」
リオンと呼ばれた青年は「何するんだはこっちのセリフなんだよ」と仏頂面をフレイアに近づけた。その圧にフレイアは押し黙る。
「正座」
「……はい」
レッド・フォースの甲板で正座をしてお説教が始まった。展開に置いていかれたシャンクスと赤髪海賊団の幹部達は呆然とその光景を見つめることしかできなかった。