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鏡面【ONE PIECE】

第11章 再会は降ってくる


「ブローゾン・M・フレイア……通称【鏡面】……以前、お頭がえらく上機嫌に手配書を見てた。アイツがひとの手配書を見るのは珍しいから何となく覚えてる」
「へぇ、あのお頭がね」
 幹部達が話をしている間も、甲板の中央では二人のバトルが続いている。シャンクスが大きく風を纏いながら斬撃を向けると、それをいなした来訪者は不規則なステップで細かい斬撃の雨をふらす。シャンクスは持ち前の運動神経でそれを全て捌き切ってみせた。
 まさに一進一退の攻防。誰も付け入る隙のない戦いにヤソップは息を呑んだ。
(お頭とあそこまで互角に渡り合える剣士なんて、鷹の目くらいしか見たことねェぞ!?)
 もちろん自分の船長が負けるとは思っていない。しかし、流れる水のように滑らかな襲撃者の斬撃は美しさすら感じる見事なものだ。それは剣を相棒に選んでいないヤソップでも理解できる。
「お頭、めちゃくちゃ楽しそうだな」
「ああ」
 ルウの言葉にベックマンは銃を下ろしながら応えた。戦闘中だというのに緩みきった口元をしながらシャンクスは戦っていた。そして、恐らく……それは相手方も……。
 何度目か分からない火花を散らして2つの剣が交錯した瞬間、凪いでいた空気がうねった。強く吹き抜けた風が帆を揺らし、来訪者のフードを跳ね飛ばす。
 そこからこぼれ落ちた深海のように深い藍色の髪、そして吊り目の紫にシャンクスは口を開いた。
「ヨォ、久しぶりだなぁぁあ!!?」
「なに力抜いてんの? 戦闘中だけど?」
 嬉しそうに破顔するシャンクスとは裏腹にフレイアはひどく不機嫌そうに刀を構える。「ちょっと、まて」とシャンクスが戦いを終えようとしているものの、全く聞く耳を持たず刀を振るう。
 無造作に振るわれたように見せて、周囲の空気を断絶する無色の刀。それを右手に持った刀で受けたシャンクスは、耐えきれずに数歩分下がった。
 その一瞬の隙をついてフレイアがシャンクスに肉薄する。思わず幹部たちが自分の武器に手を伸ばした瞬間、シャンクスは黙って手を開いた。
「……」
「……」
 先ほどとは打って変わって静かになった甲板で、シャンクスはフレイアを抱きしめていた。フレイアは……上腕から先の無くなったシャンクスの左手を握りしめた。
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