第2章 superfluous power
穏やかな風の中で刃の交わる高い音が響く。空き時間を有効に使おうというレイリーの提案で、シャンクスが剣の稽古をつけてもらっていた。
「ほら、左がガラ空きだぞ」
「冗談…!」
防戦一方とまではいかないが、レイリーの余裕綽々とした笑みを見ながら冷や汗をかく。恐らく自分が打ち込んでいる隙も態と作られているものなのだと感じて、シャンクスの手に力が篭った。
「おーい。シャンクス !!」
「あ、バ、あっぶね!!」
「余所見するな。死ぬぞ」
「レイリーさんストップ!!」
血相変えたバギーに気を取られた瞬間、打ち込まれた一撃を顔面寸前で受け止めた。そのまま続けようとするレイリーに、バギーが慌てて間に入る。ただならぬその様子に、流石にレイリーも刀を引くと、稽古の邪魔だからと預けていた電伝虫をバギーが2人の前に突き出した。
「なんでお前が電伝虫を持ってるんだ」
怪訝な様子でバギーを睨むレイリーに一瞬たじろいだものの、珍しくその目を見返しながら電伝虫の声を聞くよう促すバギー。
「小言と言い訳は後にさせてくれ。フレイアの様子がおかしいんだよ」
「フレイアの奴まさか1人で出て行ったのか!?」
「あいつ、あれ程無茶すんなって言ったのに……」
妙に張り切っていた背中を思い出しながら電伝虫の拾った僅かな音にシャンクスが聞き耳をたてる。レイリーもとりあえず優先順位を付けたのか、電伝虫の音量を調整する。
『え、な、なんで!? 女の子連れてきたら逃してくれるって!』
『おいおい、あのお嬢さんが言ったろ? お前も商品だ』
はっきり聞こえたフレイアとは違う様子の声に、シャンクスが反射的にレイリーの手から電伝虫を奪った。
「おいフレイア!!」
「シャンクス落ち着け」
「返事しろ今どこだ!!?」
「シャンクス!!」
レイリーが軽くシャンクスの頭を殴って電伝虫を奪い返す。今にも飛び出して行きそうなその体を片手で抑えながら、電伝虫から出来うる限りの情報を得ようと真剣な顔を見せる。