第2章 superfluous power
商品なら普通、傷をつけないよう最低限の配慮をする場面だと高をくくっていたが、どうやらそんな話が通じない程レベルの低い市場の集団らしい。
(顔以外は評価の対象外か……本格的にやばいかも)
売られる先を想像して焦る反面、冷静に突破口を探して視線と思考が忙しなく動く。
「……ただ負けるのだけは嫌」
元々負けず嫌いだ。何より、どんな場面だろうと諦めない限りは一矢報いる方法は見つかると、海と共に生きた短い人生で嫌というほどに知っている。
地面に落ちた短刀を蹴り上げて怪我をしていない方の手でキャッチすると、油断しきって近付いてきた男の喉を一思いに切り裂いた。突然の反撃に油断が動揺にすり替わる。その隙をついて、一気に男達の間をすり抜けようとするが、寸前のところフードを掴まれて首が絞まった。
「いっ!!」
「このガキ」
「走って!! 港に私の仲間がいるから!!」
少女を路地から突き出して叫ぶと、フレイアの必死の形相を見た少女が人混みに紛れるように走り出した。その背中を見送りながら、最後の悪あがきだとばかりに自分を捕まえた手に短刀を突き刺す。
「悪いけど行かせられない。少しの間相手をしてね」
「クソガキが!!!」
さて、何人やれるだろうかと考えならフレイアは軽く唇を舐めて微笑んだ。
(後は頼んだわよ……シャン、バギー)