第11章 再会は降ってくる
「あ?」
「お?」
突然飛び起きたシャンクスに一拍遅れて、ヤソップとベックマンが彼と同じ方向を見る。何かの気配が確実にこの船に向かってきているのを感じたからだ。
「鳥……じゃねぇよな?」
島影もなく、船影も見えない。この状況で何かが近づいてきている。異様な感覚にベックマンの眉間に深く皺が刻まれた瞬間、はるか上空の見張り台から声が降ってきた。
「左舷30度の方向に人影です!」
「人だぁ!? 船は!」
「見えません! ただ生身の人が猛スピードでこっちに向かって飛んできてます!」
悪魔の実の能力で飛ぶ力を持つものや、その身をもってして空を自由に駆ける力――月歩をつかう者も、この海には空を飛べる人類は少なくない。しかしそれは、あくまで海賊や海軍といった戦闘を日常の隣に置く者たちの話だ。
つまり、この船に向かっているのは高確率で敵である。
俄に騒がしくなった船の上で、静かにシャンクスだけが海を見つめ続けていた。
「敵は!?」
「一人の模様で……!」
「一人ダァ!? 舐めてんのか」
「いや、偵察の可能性も……」
しかし、赤髪海賊団が異常な事態に困惑している間にも人影は視認できる位置に迫っていた。宙を蹴るようにして、白いロングコートをたなびかせる。フードを目深に被っているので表情は見えないが、腰に差している刀に手をかけているのを見た瞬間、全員が自らの獲物に手をかけた。
「オイ場所開けろ!」
「え、お頭!?」
緊張の糸を引きちぎるように甲板に大声が響く。その声の主である船長のシャンクスはこれでもかというほど目を輝かせながら、甲板の中心に飛び出していく。上陸した無人島に駆け込んで行く時と似たような顔つきに全員が唖然と、しかし船長の言葉通り数歩下がる。
その瞬間だった。大きく空を蹴った影が、勢いそのままにシャンクスに突っ込んだ。体ごと差し伸ばされた透明な刀とシャンクスの長刀、そして覇気がぶつかり合う。
その激しい覇気に甲板に出ていたクルー達は次々にその場に伏していった。一波を耐える者も、続けざまに振るわれる二人の太刀と覇気に膝をつく。立ってその光景を観察できているのは幹部達だけとなった。
「……【鏡面】」
「なんだ、お前アイツのこと知ってるのか?」
ボソリと呟いたベックマンの言葉にいち早く反応したのはラッキー・ルウだ。ベックマンはタバコをふかしながら唇を歪める。