• テキストサイズ

鏡面【ONE PIECE】

第9章 それぞれの明日へ


 先に砂浜に膝をついたのはフレイアだった。
 まともに立っていられないとばかりに座り込んだ少女を見て、1番近くで観戦していたマルコが駆け寄っていく。滝のような汗を流して荒い呼吸を繰り返すフレイアの背をトントンと叩くと「ゆっくり息しろ」と喋りかけた。その指示通りにして次第に落ち着きを取り戻したフレイアは、糸が切れたように倒れる。
「あーー負けた!」
「あれだけ善戦しといて」
「どこが!? あの男についてるの殆ど私の血よ!」
 悔しそうなフレイアに近寄ったファイは、不機嫌そうな彼女を見下ろして口を開いた。
「予想より強くなってた」
「嫌味?」
「違う……」
 地団駄を踏み出しそうなフレイアを見て、マルコは喉の奥で笑った。
(おれ達といた頃より、よっぽど子供だよい)
「フレイアー!」
「お前いつまで寝転んでんだ」
「あ、シャンとバギーだ。なんか久しぶり」
 寝転んだ状態で手を振る少女を囲むように座った2人の男はマルコをチラチラ見た。なんとなく言いたいのを察したマルコは「手当てするだけだよい」と言いながら救急箱を持ち上げる。
「っても、こうも砂埃だらけだとダメだな。フレイア、風呂入って一度サッパリしてこい」
「はーい」
 返事とは裏腹に全く動く気配のないフレイアにマルコが首を傾げると、フレイアは頬を掻きながら口を開いた。
「足に力入らない」
「……」
「しょうがねェな!!」
 真っ先に動いたのはバギーだった。少女の腕を雑に引っ張って「とりあえず立て!」というバギーを見て、シャンクスは「おれがおんぶしてやろうか?」と一緒になって手を引っ張る。
「痛い痛い」
「お前達、怪我人をもう少し優しく扱えよい!」



 シャワー室の前、水音が聞こえる前でシャンクスとバギーはぼんやり虚空を眺めた。多少回復したとはいえ、転んだりしては大変だといって残ったものの、気まずさに襲われて沈黙が流れる。
「あいつ幾つになったんだっけ」
「12歳だろ」
「……あれで?」
「バギーより身長デカかったな」
「ウルセェ!!!」
「なに喧嘩してるのよ」
 背後から突然入ってきた声に2人が一斉に叫び声を上げた。弾かれたように飛び上がって振り返ると、髪の毛からまだ雫が垂れているフレイアがタオルを巻いた状態で目を見開いている。

 
/ 270ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp