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鏡面【ONE PIECE】

第9章 それぞれの明日へ


 輪の中心を見ると、軽く息を整えているファイが頬についた血を親指で拭っていた。その視線の先では森の中で煙が上がっている。
「容赦ねェな」
「するわけないだろ」
 ロジャーの苦言を受け流したファイは片足を少し下げて刀を構える。
「それに、これくらいで負けを認めるタマかよ。おれの娘だぞ」
「違いない」
 煙の付近で覇気が爆ぜるのを感じ、ロジャーは喉の奥で笑った。心配そうな声を出していた周囲も、口の中の血を砂浜に吐き出しているフレイアを見て湧き立つ。
「まだいけるな?」
「当然」
 唇の端を持ち上げるフレイアに対し、ファイも笑った。
「うわ、そっくり」
「目元が似てるからな」
「7割はマイアだったのに……惜しいな」
「まァ、十分オトコを誑しこめる顔はしてるだろ」
 ロジャーがそう言った瞬間、彼のそばにあった岩が粉々に砕けた。続いて向けられた刺すようなファイの殺気にロジャーは両手を上げる。
「地獄耳め」
「今のはお前の言い方が悪い」
「ところで、さっき何か言いかけたか?」
 我関せずと盃を傾けていた白ひげの言葉にロジャーは「あー」と言いながら態とらしく視線を逸らす。その先には、劣勢になりながらも目を輝かせて刀を振るう少女の姿があった。
「やっぱりいい」
「……そうか」
 1人、ロジャーの言わんとしたことを察した彼の右腕だけは、何も言わずにふっと笑いを漏らした。




「あれ、酒盛りになってるじゃん」
「エルトン、レオーラ。遅かったな」
「おーおー、お前ら負けたのか!」
 シャンクスとバギーが敵の肩に担がれているのを見てロジャーは豪快に笑った。それに対し、顔だけ持ち上げたシャンクスは悔しそうに眉間に皺をよせる。
「遠距離サポートが強すぎんだよ……」
「そうだろ? レオは凄いだろ?」
「何で君が自慢げにするのさ」
 レオーラはクスクス笑いながら腕の中にいたバギーを地面に下ろした。
「エルの覇気に当てられちゃって」
「だらしねェな。ありがとうよ」
「シャンクスもか!?」
「いや、彼は気絶したこの子を庇いながら戦って体力切れ」
 立てなくなっちゃって、と言うレオーラに対してシャンクスは「もう立てる!」と噛み付いた。その必死の様子に一同は声を出して笑う。
「それだけ元気なら大丈夫そうだな、小僧。どうだ? うちのエルトンとレオーラは」
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