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鏡面【ONE PIECE】

第9章 それぞれの明日へ


 怒りの籠ったシャンクスの重い一撃をいなし、痺れた手を軽く振りながらもエルトンはニヤリと笑ってみせた。
「言ったろ? それでもおれ達は海賊だ。欲しいものがあれば力ずくで手に入れる主義なんだよ」
「どうしようバギー! 正論すぎて言い返せねェ!」
「知るか!!」
(そもそも、海賊だからで全部済ませるなんざ暴論だろ!)
 バギーが一般常識に基づいた意見を心の中で叫ぶ。エルトンは悔しそうな顔をするシャンクスの前で刀を構え直した。
「それに、フレイアも剣聖と戦えるならって同意したしな」
「……」
(そりゃするだろうな。フレイアだし)
 父親似で強者との勝負を好む傾向がある少女のことを思い出しながら、シャンクスは乾いた笑いを零した。そして、その少女と父親が戦っているであろう方向をチラリと見て、強く柄を握る。
「おれも、強くなったアイツと戦いてェな」
 嘘偽りないその言葉は、刃が打ち合わさる音で掻き消された。




 一方、砂浜では親子の対決が激化していた。
 最初は場所を開けるようにしていた周囲だったが、2人は容赦なく広範囲斬撃を放つため、結局周りの者達は場所を追われて戦闘を終わりにせざるを得なくなった。結果、親子喧嘩を取り囲んで見守る時間が始まった。
「見違えるほど強くなったな」
「まったくだ。身体も成長して随分大人になった」
「グララ、ウチの息子達が手塩にかけて育ててたからな!」
「場所と人が変わっただけで、可愛がられていたようだな」  
 すっかり酒盛り状態になっている船長達は盃を片手に話に花を咲かせる。
「そういえば、半年程前にあいつの祖父が訪ねてきたぞ」
「ユピレが?」
 驚くレイリーの隣でロジャーは目を細めて酒を呷る。
「何の用だったんだ?」
「フレイアと話をして帰った。個人的なものだからと私服姿でな……海の民についての話だったらしい」
 白ひげの言葉にロジャーとレイリーは同時にぴたりと身体の動きを止めた。そしてロジャーは目を伏せながら「そうか」と呟く。
(なるほど。大方予想はつくってことか)
 2人の様子を見て白ひげは小さく笑うと、酒を飲んで息を吐いた。
「なぁ」
 ロジャーが口を開いた瞬間、大きな音と共に「大丈夫か!?」という騒ぐ声が周囲から聞こえてきた。
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