第9章 それぞれの明日へ
「こっちも海賊だぜ?」
エルトンの口上を聞いたオーロ・ジャクソンの甲板は俄かに騒がしくなった。中でもシャンクスとバギーの「ハァ!!!??」という声が高く響く。それを見たエルトンは満足そうに笑った。
「取り戻したければ力ずくというわけか」
「白ひげのヤロウ、派手なことしてくれる」
「船長!!」
焦りや一種の怒りが見え隠れするシャンクスの瞳を見て、ロジャーはニヤリと笑い大声を張り上げた。
「ヤロウども! うちのお姫様を取り戻すぞ!」
それを聞いたクルー達が慌しく戦闘の準備を進める中、ファイだけは静かにモビー・ディックを見ていた。その様子が目に入った者は一様に彼の視線の先を追い、小さく笑った。
モビー・ディックの甲板。白ひげ専用の巨大な椅子に座った男の傍に小さな影が見えたからだ。いや、隣の白ひげの影響で小さく見えるが、1年半前とは見違えるほど成長しているのは誰の目にも明らかだった。
「オイ、ロジャー」
「何だ」
ファイは唇を歪めて笑いながら自身の船長を見た。
「あのフード被ったチビ、おれが貰っていいよな?」
「ハハッ、好きにしろ!」
「ロジャー船長! おれは、さっきフレイアのこと妹って言ってた男もらっていいよな!?」
「エルトンか。大丈夫か、シャンクス。アイツは弱くないぞ」
ロジャーの隣にいたレイリーの言葉に、シャンクスはムスッとしながらそばにいたバギーの肩を掴んだ。
「大丈夫だよ! アイツの兄貴がおれたちだって証明してくる!」
「なにシレッと巻き込んでんだアホォ!!」
いつも通り賑やかな2人を見て、ロジャー達が笑い声をあげる。すると、それを遮るように近くに水柱が立った。
「向こうが焦れたな。いくぞ!」
大砲を撃ちながらも、明確に行き先があるように舵をきるモビーに着いていくと、両者は無人島に辿り着いた。
「よう、久しぶりだな」
「すっかり世間の注目の的じゃねェか」
船を降り、向かい合う両船長の周りには古株を始めとしたお互いの船のクルー達が揃っていた。その中でも白ひげとマルコに挟まれている少女へロジャー海賊団のクルー達はチラチラと視線を送る。しかし、当人はただ真っ直ぐに、向かい側に立つファイだけを見ていた。
「んじゃあ、挨拶も済んだことだ」
コキリと首を鳴らした白ひげを見て、ロジャーも自らの相棒に手をかける。