第2章 superfluous power
「……よし」
辺りを見渡し、ファイの姿が見えなくなったのを確認してからこっそりと船を降りて行く。振り返れば、バギーとシャンクスが手を振っているのが見える。
2人に頼まれた個人的な買い物と、自分の買い物を買出し組の大人達に見つからないように遂行する。ミッションの確認をしながらグッとフレイアは拳を握りしめた。ここで1人で何事もなく任務を完了すれば、父親も今後は単独行動を許してくれるだろうという思いがあった。
(見てなさいよ!! もう私は子供じゃないんだから!!)
しかし、そんな決意は小一時間後には消え失せていた。
(どうしてこうなったのかしら)
人攫いのアジトの中で泣き喚く子供を背に庇いながら、心の中で頭を抱える。
事の発端は買いたかったものを全て買い終え、宣言通り、名物の食べ物でもお土産に買って帰ろうと市場を歩いている時だった。
「あの、お姉ちゃん……」
「え? 私?」
唐突にパーカーの端を引っ張られて呼び止められたフレイア。裾を掴む手の先を見れば、少女が今にも泣きそうな顔をしている。ただならぬ雰囲気を感じて、少女の目線にしゃがみ込むとニコリと笑ってみせる。
「どうかした?」
「あ、あのね、私の妹がいなくなっちゃって……お姉ちゃん一緒に探してくれない?」
「え? えっと……」
見知らぬ少女の妹を探してあげる義理などない。大人たちに見つかる可能性も高まる。父に見つかった場合、怒られるどころか自分も暫く出禁になることは請負だ。しかし、大きな目いっぱいに涙が膜を張る歳下の子供を邪険に扱えるほどフレイアは非道になれなかった。
「分かった。一緒に探してあげる」
(でも、どうして大人じゃなくて私を頼ってきたのかな)
一瞬湧いた疑問は、フレイアの言葉で少女が見せた笑顔にすっかり消え去ってしまった。
「どの辺りで逸れたの?」
「えっとね……向こうの路地の近くで……その、人混みで手を離しちゃってね」
「そっか」
少女の手を引きながら指差す方へ足を向けた。進むほどに人通りが減っていく様子に違和感を感じながらも、痛いほど強く自分の手を握りしめ震える少女を振り解くことは出来ない。
(面倒なことに巻き込まれそうな予感がするわね)
反対の手でそっとポケットの中の電伝虫に触れる。
「あの、お姉ちゃん……」
「うん?」
「……ご、ごめんね」