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鏡面【ONE PIECE】

第8章 Incomplete


 珍しく焦った顔で甲板まで走ったフレイアを迎えたのは緊張した顔の船員達と、渋い顔の白ひげ、そして……。
「よぉ、元気そうだな」
「おじいちゃん……何でここに」
「少し前に手紙が来てたんだが、返事をする前に来やがってな」
 苦々しい顔でそう言う白ひげと肩をすくめた祖父を見て、フレイアは溜息を吐いた。祖父ーークラウド・マーレ・ユピレはそういう男だというくらいは知っている。
(本当に数えるほどしか会ったことない私でも分かるんだから相当よね)
「お前に話があっただけだ。ロジャーの船にいると、あのクソ男が会わせないようにするから仕方ないだろう」
「まぁ、それはそうだけど」
「そういうことだ。少し借りていくぞ、白ひげ」
「え、ちょっと!」
 右腕を掴まれ、船から降りて行こうとするユピレに引き摺られながらフレイアは白ひげの方を振り返った。しかし、その混乱に満ちた眼差しを受けて、白ひげは「夕飯までに戻れよ」とだけ告げた。


「いいのか、オヤジ」
 フレイアの背中が見えなくなってからエルトンが尋ねると、白ひげは頭を掻きながら答えた。
「何もしねェ。こっちのことを何も聞かねェ。連れてもいかねェと約束したからな」
「何それ。何しにきたんだよ」
「話、だとよ」
「はなしィ?」
 なんだそれ、というエルトンを横目にマルコと白ひげは目を合わせた。わざわざプライベートとしてフレイア個人に接触してきていることから、彼女の身体に関することであることは何となく予想がついた。だからこそ、白ひげも何も言わずにいかせた。
 しかし、突然の海軍中将の登場で浮き足立つクルー達をどう落ち着けるか、というのは別問題だ。
「まったく、血が繋がってないとはいえ面倒くせェ親子だ」
「まったくだよい」
 幸い、仕事は街で溢れかえっている。あの事件を考えれば悪い言い方になるが、それに感謝しながらマルコは手を打った。
「ほら! お前らいつまで駄弁ってんだ! 仕事しろよい!」
「は、はい!!」
「なぁマルコ」
「なんだ」
 悪戯小僧のようなエルトンの笑みを見て嫌な予感を働かせつつ、マルコは尋ねた。
「あいつらの話盗み聞いてたらバレるかな?」
「確実にバレる上に殺されかねないからやめろ」
「バカなのかなエルは」
 横から出てきたレオーラにも嘲笑され、エルトンは「ちぇ」と唇を尖らせた。
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