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鏡面【ONE PIECE】

第8章 Incomplete


 ノーバ島での一戦より一夜明け、町は復興に向けて一歩を踏み出していた。そんな中、ひっそりと一艘の小舟がノーバ島の港に辿り着き、一人の男が上陸していた。静かに町の中に歩みを進めた男の姿を見て、復興作業を手伝っていた白ひげ海賊団のクルーは阿鼻叫喚の声を上げた。


 一方、負傷者の相手をするためにモビー・ディックにいたフレイアは、びくりと肩を震わせて窓の外を見た。そんな彼女の様子を見たマルコは、首を傾げながら同じ方向を見る。
「何かあったのか?」
「あ、いや、なんだか突然声が聞こえて……」
「声? 例のやつか」
「うん……何だったんだろう」
「なんて言ってたんだよい」
「えっと、なにか来た? みたいな」
「来た?」
 手に持っていた薬の瓶を棚に仕舞い、怪訝な顔をしたマルコにフレイアは困ったように笑った。指輪には一切触れていない状態で海の声が聞こえたのは悪魔の実を食べて以来、初めての出来事だったのだ。
「た、大変だァ!!」
「お、オヤジ!!」
「ん? 何かあったのか?」
 にわかに甲板のほうが騒がしくなったのを感じて二人は顔を見合わせる。いつも騒がしいエルトンも復興作業にでているため、先ほどまで平穏そのものだった船の中はいつの間にかいつもの騒がしさを取り戻しているようだった。
「私見てこようか?」
「そうだねい」
 しかし、そんな喧騒は日常茶飯事だとばかりに二人は落ち着いた様子で話をする。フレイアが状況確認に医務室を出ようとした瞬間、勢いよく扉が開かれ、血相を変えた若手のクルーが飛び込んできた。
「フレイア!!」
「え? 私?」
「おまえ、おまえの」
「おい、落ち着けよい」
 慌てているせいで舌がもつれているクルーに呆れた顔をしつつ、ただ事でない雰囲気を感じて警戒するマルコに促されてクルーは深呼吸をする。それを黙ってみていたフレイアは、自分が呼ばれた理由を考えながら甲板のある頭上を見上げる。
「はあ……大変なんだ!!」
「だからどうした?」
「フレイアの」
「私の?」
「フレイアのじいちゃんが来たんだよ!!」
「……はァ!!!??」
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