第8章 Incomplete
「うっわ」
「これ、フレイアの居る方じゃ……」
「じゃあ壊したのはあいつだ。何も問題ない」
普段の大味な技の出し方を思い出しながらエルトンが言うと、マルコも無言で頷いた。意識を目の前に戻して2人が出入り口から出ようとすると、入り口付近に銃弾の雨が降り注ぐ。
「あっぶね!!」
「エルトン、邪魔だよい」
「文句はレオに行って!」
事前に言われていたのか、入り口付近に残っている味方はおらず、焦りながらも邪魔にならないよう2人は下がった。そんな中、レオーラの弾を器用に仲間を盾に使って避ける小柄な男。それを視認するとエルトンが地面を蹴った。
「おいエルトン!」
咄嗟に止めようと手を伸ばしたマルコの努力虚しく、エルトンはレオーラの撃つ弾の中を全力で走り抜けながら剣に手をかけた。
「チッ」
エルトンの刀も寸前のところで肉壁を張った男は、その向こうから手を伸ばしてエルトンの袖口を掴む。
「!?」
「仲間だったらあいつも撃てないでしょう」
嫌らしい笑みを浮かべる男の赤く染まった瞳を見た瞬間、咄嗟にエルトンは男の胸倉を掴んだ。
「レオ!!」
目を閉じながら地面を思いっきり蹴り、自分ごと男を宙に浮かせる。男の焦った声が響く前に、男の左胸にレオーラの撃った弾丸がのめり込んだ。
「エルトン!!」
沈黙したまま、重力に従って落ちてきたエルトンと男に慌てて白ひげ海賊団の面々が駆け寄ろうとすると、横の方からもう1人の男が飛んできた。
「それ、もう1人の中心核」
皆が飛んできた方を見ると、全身土埃で汚れたフレイアが刀を納めながら微笑んだ。それに一同が安堵していると、エルトンがゆっくり動いた。
「あーーいってぇ」
頭を押さえながら体を起こすエルトンに、近くにいたクルー達が駆け寄る。
「無事かエルトン!」
「大丈夫ですか!?」
「え、もしかして当たった?」
銃を持ったままのレオーラが不安そうにエルトンの近くにしゃがむ。それに向かってヒラヒラと手を振るエルトンは、勢いよく立ち上がってピースサインを見せた。
「受け身取れなかっただけ。余裕余裕」
「なん、で」
地面に伏したままの男がか細い声をあげる。