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鏡面【ONE PIECE】

第8章 Incomplete


 普通ならば笑い飛ばすところだが、エルトンについて言うならば「勘」がかなり当てになる男だ。良いものも悪いものも、外れることが基本的にない、一種の天性の才能ともいえる。それを散々知っているマルコは眉を潜めて入り口で微動だにしない男達を睨みつけた。
「何もしてこねぇな」
「……レオーラ」
「了解」
 返事をするや否や、レオーラの銃弾が1番前にいた男に向かって飛んでいく。威嚇と試しの意味を込めて撃たれた弾をモロに脇腹に受けた男は、しかし顔色を一切変えずにその場に立ち続けた。
「え、なにあれ」
「噂にきくゾンビってやつ!? おれ初めてみた!」
「おれだって初めてだよい……」
 しかし……とマルコは眉を潜めた。鮮血が流れる目の前の男達はどう見ても生きた人間だ。エルトンの言うゾンビだとは考えられない。しかも、虚な目の男達はまるで置き物のように動かない。
「エルトン、一回斬り込んでこい」
 いつの間にか2人の背後に立っていた白ひげも、胡散臭いものを見る目で男達を見つめていた。船長の一声を受けて、エルトンは軽く構えをとるとそのまま一直線にレオーラが撃った男は向かって斬りかかる。すると、それまで一切動かなかった男が手に持ったカトラスをエルトンに向けた。
「おっと」
「……」
 重く澄んだ音をたてて交わった剣に笑みを浮かべるエルトンだったが、男の尋常じゃない力に無理やり元いた場所に飛ばされた。危なげなく着地したエルトンが追撃に備えたが、当の男はそれ以上動かず、またその場に棒立ちになる。
「ええ……」
「気味悪いな」
「……エルトン、マルコ、おれが散らすから直ぐ屋敷へ行け」
「オヤジ?」
「大方、時間稼ぎだろう。悪魔の実の能力か知らねェが、こんなもんに気を取られて黒幕に逃げられたらどうする」
「了解」
「それは御免だ」
 白ひげが薙刀を振りかぶったのを見て、2人は一気に後方へ飛び退いた。次の瞬間、激しい地鳴りと共に屋敷の入り口付近が半壊し、先程まで立っていた男達も瓦礫と一緒に吹っ飛ばされた。
「ははは……敵ながらご愁傷様です」
「ホラ行くぞ」
 広くなった入り口に走っていく2人に瓦礫の方から銃弾が飛ぶ。しかしそれを空中で他の弾が相殺した。
「邪魔させないよ〜」
 レオーラがしてやったりといった顔で笑う。それに背中を押されるように2人は屋敷の中に入っていった。
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