第8章 Incomplete
「こちらレオーラ」
『敵アジトらしきところを発見。森と街の境目にあるでかい屋敷』
「あそこって、街のまとめ役の家じゃあ……」
『ああ、そこだ。まとめ役が生きてんのかまではわからんがな』
「縁起でもないこと言わないでよ……」
正論だが、今聞きたい言葉ではない。フレイアの言葉に周りにいた者達は一斉に首を縦に振った。
『事実さ。ま、これで一応任務終了だ。これから船に戻る……十分くらいで戻れるはずだ』
「了解。気をつけてね」
通信をきって、レオーラは改めて全員へ声を張り上げた。
「全員、いつでも暴れられるように準備!!」
「了解!」
「おう」
「まったく、俺らでやればいいものを……」
テンションの差はあれど、やる気満々といった雰囲気の者達にレオーラは柔らかく微笑んだ。
しかし、偵察にでていた数人はそれから数時間経っても、戻っては来なかった。そうなれば、考えられる可能性は限られる。
「……」
「レオーラ」
「ごめん……僕が判断を誤ったから……」
唇を噛みしめるレオーラを見て、フレイアは静かに息を吐いた。
「顔をあげてよ。何も間違ったことはしてないわ」
「でも……」
「敵のアジト突き止めたから次に移れる、でしょう」
「……そうだね」
諭すような、叱りつけるような声にレオーラはグッと拳を握って頷いた。それを見たフレイアは彼の背中を叩いた。
「奪われたら取り返せばいい」
「ゼハハハ、そうだ、いいこと言うじゃねェかフレイア」
「おれたち海賊っすからね」
「……はは、そうだね」
「しみったれたツラ曝してんじゃねェよ、たいちょー」
全員が口々にレオーラを激励する。それを聞いて落ち着いたのか、レオーラは一度大きな深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
「今の問題は西班が生きてるか死んでるかだ」
「おれなら生け捕りにして仲間のこと聞くけどなァ」
「うん、その可能性は高い。でも、その場合タイムリミットは今夜までだ。もし口を割ってないなら、仲間がいるかも怪しい男達を胃ぁkしておくメリットがないからね」
「でもオヤジ達が来るのは」
「明日の昼。でも、西班の安否確認と救出は急を要する」
ここでいったん話を斬ったレオーラは珍しく両目共にしっかり開いて全員を見た。
「どうする。行くか、行かないか」