第1章 見習いトリオ
フレイアの様子を優しく見ていたファイが不意にシャンクスを睨みつけた。反射的に背筋を伸ばして両手を上げたシャンクスに、冷めきった声が降り注ぐ。
「未熟なフレイアが能力を使うのは、決まって感情のキャパが超えたときなんだが……何があったか知ってるか?」
「い、いや、おれにもさっぱり……」
「ホォ……」
「本当に何もやってないです!!!」
「そうだよ、お父さん」
「フレイア」
今にも自分の刀を抜きそうなファイと後ずさるシャンクスの間に入ってフレイアが父親を見上げる。その自分より小さな背中が非常に頼もしくて、シャンクスが胸を撫で下ろしたのも束の間のことだった。
「ちょっとシャンクスに抱きしめられて驚いただけだから!」
「ああ!?」
(火に油注ぐんじゃねェよ!!!)
フレイアは海の声は聞こえても、シャンクスの心の悲鳴は聞こえない。過保護な父親が放つ刺すような殺気に冷や汗をかきながら、シャンクスは天を仰いだ。皮肉なほど美しい月が満点の星空の中で煌々と輝いていた。