第8章 Incomplete
「よし、じゃあ2番隊出動と行こうか」
ポンチョのようなマントの裾を夜風に遊ばせながら、隊長のレオーラが全員を見渡す。怪我によりドクターストップがかかった者を除く全員がいることを確認し、甲板にいる白ひげを見あげる。
「じゃあ行ってきまーす」
「気をつけていけ。くれぐれもテメェらだけで動こうとするなよ」
「了解」
脇に立っていたエルトンと僅かに目配せをすると、軽く頷いて小型船に乗り込んでいく。続々と後に続くなかで、フレイアは最後尾で大きく深呼吸をしていた。
(答えはまだ見つからない。でも、もうすぐ……)
「フレイア」
「ビスタ、どうしたの?」
背後からかけられた声に振り返ると、ビスタが難しい顔をしながら頭をかいている。
「ああ、なんだ、おれの言ったことを気にしすぎるなよ?」
「……大丈夫よ。その程度のことでヘマしないわ」
「だったらいいが……」
鞘に入れたままの刀をビスタに向けながらフレイアは不敵に微笑んでみせた。
「帰ってきたら、答えを言うわ」
「……わかった」
それに応えるようにビスタもニヤリと笑った。
「楽しみにしておこう」
「うん」
「フレイア! 早くしろ!」
「はーい」
小型船からの声に返事をしながら、フレイアは走っていった。
「……子供は強いな」
「アイツは子供じゃねェ……あんなのが子供でたまるか」
「エルトンの方が子供っぽいからな」
「うるせェ」
「グラララ」
「オヤジまで!!」
にわかに騒がしくなった甲板の声に背中を押されながら、2番隊を乗せた船は進行方向へと足早に進んでいくのだった。