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鏡面【ONE PIECE】

第8章 Incomplete


 不貞腐れた顔をしながらもボソリと呟かれた言葉に、白ひげが満足そうな顔で頷いた。
「なんだ、自分で分かってるじゃねェか」
「マルコのお陰でね! 本当に優しいお兄ちゃん達で嬉しいな!!!」
 自棄になって顔を背けるフレイアを見て白ひげは大きな声をあげて笑った。その声で部屋が震え、外がにわかに騒がしくなったが、二人共気にすることなく向かい合ったまま話を続ける。
「グララ……じゃあ、どうするんだお前は」
「どうって……それが分かれば苦労はないというか……」
「……お前はどうして強くなりたい?」
「え?」
 予想外の問いにフレイアは思わず呆けた顔で白ひげを見上げた。当の白ひげ本人はかつてないほど優しい眼差しで彼女を見つめている。
「私はどうして強くなりたいか?」
「そうだ。どうして強くなりたい? 強くなってどうしたい? 言い方は色々あるが、お前のその強さへの姿勢は何を目指してる?」
「……」
「この問いに笑って即答出来るようになれ。そうしたら、もう迷う必要なんかねェよ」
「どうして……強くなりたいか」
 手元にある刀をじっと眺めながら呟く。初めて剣を教えてくれとせがんだ日、初めて【湖月】がきちんと決まった日、手加減されまくりの中でも初めて父親に一太刀入れられた日、様々な記憶がフラッシュバックしては消えていく。
「……答えは出たか?」
「あと、少し……かな?」
 曖昧な笑みを浮かべながらも、澄んだ瞳をしたフレイアに白ひげは満足そうに頷いた。
「今夜出るんだろう。さっさと仮眠でも取ってこい」
「はい! ありがとう、オヤジさん」
「ハッ、兄貴たちが不甲斐ないから末っ子の面倒みただけだ」
 その返答にクスリと笑うと、軽く礼をしてフレイアが部屋を出て行った。その背中を見送る目には優しい光が滲んでいた。





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