第8章 Incomplete
「なんかあったのか?」
「いや、あそこの職人にしては粗悪なものを作ると思ってね」
「そうなのか?」
座り直した白ひげが興味深そうに彼等を見下ろす。彼にとっては専門外のため細かいところまではよく分からないが、レオーラがよくノーバ島で銃をメンテナンスしているのは知っていた。レオーラは「細かいことは省くけどね……」と前置きして簡単に粗悪な理由を列挙する。
「この出来だと長期使用に耐えられないし、引き金が重くて使えない人間もいると思う。あと飛距離も出そうにない。撃ってみなきゃ分からないところはあるけど、少なくともあその職人の仕事とは思えないね」
「お前のお気に入りだからな」
「腕はいいよ。少数しかいないし、資源が乏しい島だから勿体ないけど」
そろそろメンテナンスしたかったけど、また暫くお預けかなぁと残念そうな顔をするレオーラに同意を返しながらエルトンも銃を見る。
「……さっぱり分からん」
「だろうね」
自分の剣が曲がってるのも気づかない時があったのを思い出しながら、レオーラはクスクスと笑った。それをみて拗ねた顔をするエルトンをみて白ひげもやっと表情を和らげた。
「レオーラ、2番隊でフレイアを預かれ」
「了解。でもいいの? エルに任せてたのに」
「あいつ使い勝手いいのにー」
「グラララ、小娘に頼りすぎだお前は」
その言葉にニヤリと笑いながら「出来るって言う子にはやらせたいじゃない」と言うエルトンの肩をレオーラが軽く叩く。
「副隊長のくせに」
「うるせー、うちの隊長がフレイアのこと放任なんだから仕方ないだろ?」
その言葉に白ひげは「お前は構い過ぎだ」と笑いながらレオーラを呼ぶ。
「2番隊は先んじて島の様子を見に行く役回りだ。あいつもお前も鼻が利くから丁度いいだろ」
「了解」
「オヤジオヤジ、おれも行っていい?」
「お前は最後まで居残りだ」
「ちぇー、面白そうなのに」
「お前に任せると騒ぎしか起こさない」
「まったくだ」
2人揃って笑う様子を見て唇を尖らせるが、すぐ機嫌を直したようでエルトンはレオーラの背中を叩いた。