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鏡面【ONE PIECE】

第8章 Incomplete


「まったく、何年たっても目を離すとすぐ怪我するんだから」
 半袖のシャツに赤がジワリと滲むのを見てフレイアも眉を顰めてエルトンを見上げる。
「怪我したならさっさと言いなさいよ!」
「これくらい怪我じゃいててて!!」
「フレイアも腕と足から血が出てるよ。ちょっとした怪我でも細菌感染したら大変なんだからね」
「……はーい」
 同類じゃねェか、とはやし立てるエルトンの膝裏にフレイアが蹴りを入れると、突然大きな影が三人に近寄っていた。
「フレイア」
 頭上から落ちてきた声にフレイアが顔を上げると、白ひげが微笑みながら彼女に向かって手を伸ばす。大きな手が小さな体を壊さぬように優しく撫でる。
「よくやったな」
「……」
 初めて名前を呼ばれたことで呆けた顔をするフレイアの頬が次第に緩んでいく。褒められて嬉しそうな少女の顔に、側にいた二人も微笑ましそうに目を細める。
「よし、お前達も医務室に行って来い」
「はーい」
 足取り軽く船内に入っていく後姿を見送り、エルトンは白ひげを見上げる。
「なー、オヤジ、おれは?」
「ああ? お前はアレくらい出来て当然だろうが」
「ええ……」
 不満そうに唇を尖らせながらも、満更でない顔をするエルトンを見てグララと白ひげは笑った。
「え、笑うとこ?」
「レオーラの援護なく無傷で帰ってきてみせろ、小僧」
「それは……努力します……」
「エルはさっさと医務室に行きな」
「え? おう……」
 半ば強引に背中を押したレオーラに不思議そうな顔をしつつ、エルトンは歩いて行った。
「オヤジは怪我はない?」
「ねェよ。レオーラも平気そうだな」
「僕は敵とそうそう接触しないから……」
「強くはねェが妙な武器を使う連中だったな……怪我人が多い」
 医務室の順番待ちをしながら甲板の掃除と戦利品の運び込みをしている軽傷の者達をみて、白ひげは苦々しい顔をする。その隣でレオーラは一丁の銃を取り出すと、白ひげに差し出す。
「これは?」
「敵船のクルーからいただいたんだけど、この銃に彫られてる紋章に見覚えがあってね」
「これは……」
 一気に険しい顔つきになった白ひげ。暫く考える素振りを見せると、レオーラに向き直って指示をだす。
「お前はとりあえずマルコの様子見と、医務室の方の手伝いもしてやれ。おれは航海士と進路の話をしてくる」
「了解」
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